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記念講演会内容要旨

 
会場風景
厚生労働省老健局介護保険指導室長 難波 弘氏による記念講演を「介護フェア2006〜地域・在宅・予防〜」の開催説明会とともに実施しました。
以下はその講演内容の要約です。(文責:事務局)

記念講演 超高齢社会における介護保険制度改正の概要 難波 弘氏
厚生労働省老健局介護保険指導室長
難波 弘氏
(参考:厚生労働省 介護・高齢者福祉ホームページ


  介護保険制度の現状と高齢者介護の課題
   介護保険制度は2000年4月にスタートし、介護保険法の附則に5年を目途とした見直しが規定され、昨年6月に介護保険法の改正法案が成立したところである。この改正法の一部(介護保険施設の居住費及び食費が利用者負担)は昨年10月に施行され、本体部分は本年4月施行となっている。

 介護保険の65歳以上の被保険者は、2000年4月に2,165万人から2004年12月には2,488万人と4年9月で15%増となっており、毎年3%強の割合で65歳以上の高齢者人口が増えていることになる。一方、要介護認定を受けた人数については、制度スタート時には認定者数は218万人だったが、2004年12月には406万人と5年弱で約2倍になっている。これは高齢者人口の伸び(毎年3%強)に比較して、要介護認定者(毎年16〜17%の伸び)の伸びは5倍くらいの勢いで増加している。

 また、要介護認定者のうち、特に要支援・要介護1の比較的軽度の認定者が大幅に増加しており、要介護認定者数の約半数を占める状況になっている。このことは、今回の制度改正の大きなテーマとなっている。

 一方、我が国の人口の高齢化の状況をみると、2015年には「第1次ベビーブーム(団塊)世代」が前期高齢期(65〜74歳)に到達し、その10年後(2025年)にはこれら世代が後期高齢期を迎える頃が高齢者人口のピーク(約3500万人−現在が2500万人)となる。また、認知症高齢者については、現在約150万人と見込まれており、2015年には250万人になると推計され、2015年には、高齢者世帯は約1,700万世帯に増加し、そのうち一人暮らしの世帯は約570万世帯に達するといわれている。今回の制度改正は、このような2015年の高齢者像を見据え改革を行なっている。

  制度に対する評価
   介護保険制度に対する評価については、2005年1月の世論調査では「大いに評価している」「多少は評価している」を併せると約6割が制度を評価するとしており、この割合は年々増加している。これは制度がある程度定着して評価も高くなっているという結果だろうと考えている。また、制度創設時には、いくつかの懸念があった。まず、家族の介護負担の軽減につながらないのではないかといった点であるが、平成15年の読売新聞の自治体アンケート調査で「家族の負担が軽くなった」とする評価が7割を超える状況となっている。

 また、制度創設時には保険あってサービスなしとの指摘があったが、サービス利用者数は2000年4月に150万人程度だったものが、2004年3月には300万人と4年余りの間に約2倍になっており、その中でも在宅サービスの伸びが非常に大きい。これは介護保険制度ができる前までのサービス提供主体は地方公共団体や社会福祉法人などの公益法人に限られていたが、介護保険制度が始まってからはサービス事業者として営利法人等も参入できることとなり、実際に営利法人やNPO法人の伸びが非常に大きくなっている。

 次に、公平・公正な要介護認定ができるのかといった懸念もあったが、現在、79項目の要介護認定の調査項目があり、それをコンピュータ処理し1次判定を行ない、医師等による2次判定を行なっているが、これらの認定への納得度・妥当性を見ると相当高い割合で評価を受けている。

 また、制度発足時には市町村の事務負担が増えて混乱が生ずるのではないかとの懸念があったが、総体としては大した混乱もなく制度はスタートし、市町村の評価においても“大いに評価している”、“多少は評価している”といった回答が9割ぐらいを占めている。

  介護保険財政の現状
   介護保険の費用は毎年10%を超える勢いで伸びており、制度創設時の3.6兆円が現在では6.8兆円と約2倍になっている。介護保険の費用はどのようにして賄っているかというと50%が保険料、50%が公費で、国が25%、都道府県、市町村がそれぞれ12.5%を負担している。つまり、保険料と税金でこの制度は成り立っている。

 また、第1号保険料(65歳以上が納める保険料)の全国平均は第1期(2000〜2003年度)が2,911円、第2期(2004〜2006年度)は3,293円と13%程度の伸びとなっているが、実質的な伸びはもう少し高くなる。これは、介護給付費の伸び(約38%)に比べ低いが、その要因は、第1期保険料が各市町村において比較的高めに設定されている等の特別事情によるものと考えられる。さらに、第3期(2007〜2009年度)の保険料は現状のままでいくとおそらく4,300円ぐらいになるのではないかと考えられる。制度を運営する上で、高齢者の保険料負担が多くなることは好ましいことではなく、その意味では給付の効率化、重点化を図ることにより、できるだけ保険料の高騰を抑える必要がある。

  制度改革の基本的な視点
   今回の制度改革の基本的視点としては、まず第一は「明るく活力ある超高齢社会の構築」である。明るく活力ある超高齢者社会を構築するためには、高齢者ができる限り健康で活動的な生活を送ることが重要であり、このため、介護予防の視点から、高齢者の心身機能の低下を予防することによって、要介護状態に陥らない、あるいは状態が悪化しないようにすることを重視した「予防重視型システム」へ切り替えていく必要がある。第二は、「制度の持続可能性」である。介護保険制度は2000年4月に施行され、おおむね順調に推移し、短期間のうちに国民の老後生活における介護の不安に応える社会システムとして定着した。しかし、今後我が国は、高齢化が急速に進展する時期にさしかかることから、制度の持続可能性という視点から、給付の効率化・重点化等思い切った見直しが必要である。第三は、「社会保障ホの総合化」である。介護、年金、医療等の各制度間の機能分担を明確化にするとともに、相互の連携を進めることにより、制度の重複や空白を解消し、社会保障制度全般を効率的かつ効果的な体系へと見直す必要がある。年金との関係では、例えば、欧米諸国では施設入所者の居住費や食費は入所者の自己負担として年金で支払われることが前提となっているが、こうした施設入所者に関する年金と介護保険の給付調整を行なう。

  介護保険制度改革の主な内容
 
■ 予防重視型システムへの転換
a)新予防給付
   要介護認定者のうち、要支援や要介護1といった軽度者が大幅に増加しており、これら軽度者に対するサービス提供が状態の維持又は改善につながっていないとの指摘がある。これら軽度者の原疾患は多様であるが、徐々に生活機能が低下する廃用症候群(生活不活発病)の状態にある者、あるいはその危険性が高い者が多く、このような状態の者については、適切なサービス利用により状態の維持・改善可能性は高いといわれている。このような観点から、要介護状態等の軽減、悪化防止に効果的な軽度者を対象とする新たな予防給付を創設することとしたところである。新予防給付については16のサービスがあるが、現行の軽度者のサービス利用状況を見ると、訪問介護、通所介護、通所リハビリ及び福祉用具の貸与で全体の9割を占めており、これらが新予防給付キのサービスの中心になると考えられており、既存サービスの見直し及び運動器の機能向上、栄養改善、口腔機能の向上を選択的サービスとして加えることとなる。
 さらに、新予防給付については、要支援及び要介護1の一部の者が対象となるが、このことについては、平成18年4月から要介護認定の仕組みが一部変更され、これまでの要介護状態区分の審査に加え、状態の維持又は改善可能性の審査を行ない、状態の維持又は改善可能性がある者については、要支援1又は要支援2となり、これらの者が新予防給付の適用となる。
 新予防給付の施行は本年4月であるが、市町村の事情によって4月施行ができない場合は、市町村の条例によってに2年間の経過措置がとれることとなっている。また、施行後3年を目途として、これらの新予防給付の費用対効果などについての評価を行なうこととなっている。
b)地域支援事業
   地域支援事業は、要支援・要介護状態になる前からの介護予防を推進するとともに、地域における包括的・継続的なマネジメント機能を強化する観点から市町村の実施する事業として創設するものである。事業の内容としては、介護予防のスクリーニングを踏まえ、要支援・要介護になるおそれの高い高齢者を対象に介護予防サービスを提供する介護予防事業と介護予防のマネジメント、総合相談・支援・地域ケア支援・権利擁護等を行う包括的支援事業に加え、介護給付費適正化、家族支援等の任意事業が行えることとなっている。
 具体的には、市町村(法人等への委託可)が実施する地域包括支援センターには、社会福祉士、保健師、主任ケアマネージャー等を配置し、これらが連携し、要支援・要介護状態になる前から介護予防を進めるとともに、高齢者に対する様々な相談、権利擁護・虐待の問題などについて対応することとなる。

■ 施設給付の見直し
   次に「施設給付の見直し」であるが、すでに昨年(2005年)10月に施行されている。この見直しは、在宅と施設の利用者負担の公平性、介護保険と年金給付の調整の観点から、低所得者に配慮しつつ、介護保険施設などにおける居住費及び食費を保険給付の対象外とするものである。具体的には、要介護5の特養入所者と在宅サービス利用者の自己負担を比較すると、特養は5.6万円、在宅は居住費、食費及び一部負担で約10.4万円という状況にあり、これらの利用者負担のバランスを図るため、今回の見直しが行われたものである。なお、市町村民税非課税の世帯以下の低所得者については、負担の軽減措置(基準額との差は介護保険で補足給付)が講ぜられている。
 介護保険の場合には利用者負担の段階が4つに分かれており、第1段階は生活保護の受給者、第2段階は年金80万円以下、第3段階が年金80万円超266万円以下、第4段階が年金266万円超となっている。特別養護老人ホームの利用者負担(月額)の変化を見れば、第1段階では現行、見直し後とも2.5万円と負担は変わらず、第2段階では4.0万円が3.7万円と逆に下がり、第3段階では4.0万円が5.5万円と若干増え、第4段階については5.6万円が8.7万円と負担額が増えている。これは所得のある方々については相応の負担をしていただくということになる。また、ユニット型個室の場合は多床室に比較して利用者負担が大きくなる。

■ 新たなサービス体系の確立
a)地域密着型サービスの創設
   一人暮らしの高齢者あるいは認知症の高齢者が今後増加することが見込まれており、特に認知症高齢者については、環境の変化はよくないといわれており、このため、身近な地域で、地域の特性に応じた多様で柔軟なサービス提供が可能となるよう、「地域密着型サービス」を創設したところである。この地域密着型サービスは当該所在地の住民が利用することを原則に、6つのサービスがある。
 地域密着型サービスには、「通い」を中心として要介護者の様態や希望に応じて随時「訪問」や「泊まり」を組み合わせサービスを提供することで、中重度となっても在宅で生活が継続できるよう支援する「小規模多機能型入所者生活介護」、在宅にいる場合でも夜間を含め24時間安心して生活できるよう定期巡回と通報による臨時対応を併せた「夜間対応タ型訪問介護」、「認知症グループホーム」等がある。
 これまで、居宅サービス事業者の指定、監督権限は都道府県知事となっていたが、地域密着型サービスについては所在市町村が指定及び監督権限を持つことになり、サービスの基盤整備についても市町村の日常生活圏域ごとに必要な整備量を定めることとなる。
b)地域包括支援センターの創設
   地域包括支援センターは、地域における総合的な相談窓口機能、介護予防マネジメント、包括的・継続的マネジメントの支援を行なう中核的なセンターと位置づけられている。介護予防のマネジメントであるとか総合相談、権利擁護等々を行なう。人的体制としては、先ほど申したとおり、社会福祉士、主任ケアマネジャー、保健師等が連携して行なっていくことになるが、大きく分けて社会福祉士は総合相談・支援・高齢者虐待等を、保健師は介護予防のマネジメントを行ない、主任ケアマネジャーは地域のケアマネジャーが抱えている支援困難事例等への指導・助言等を担当することになるが、いずれにしてもこれら三職種が連携を図りながら地域包括的ケアを進めていくことになる。
 なお、地域包括支援センターには運営協議会を設置することとなっており、包括的支援事業の円滑な実施、センターの中立性・公平性を確保するために地域の介護保険サービスの関係者、医師会、NPO、利用者等様々な方々が参加し円滑な運営を図ることとしている。

■ サービスの質の確保・向上
  今回の法改正の中で介護サービスの情報公表の義務付けなされ、全ての介護事業者が介護サービスの内容、運営状況に関する情報を公表することとなった。これは、要介護者等が適切かつ円滑に介護サービスを利用することができる機会を確保するために基本情報(事業所の職員体制、サービス提供時間、利用料金等)と調査情報(介護サービスに関するマニュアルの有無、身体拘束を廃止する取組みの有無等)を年1回公表するものである。その結果、利用者が介護サービス情報に基づく比較検討を通じて、介護保険事業者を選択することになる。
 また、事業者規制の見直しについては、指定の欠格事由、指定の取消要件が追加された。制度施行後5年余りで指定取消しを受けた事業所は350カ所程度あるが、今回の改正では指定取消を受けた事業者は5年間は新たな指定ができないなどの規制の強化を図ったところである。さらに、6年ごとの指定の更新制の導入や事業者に対する勧告、業務改善命令等権限を追加している。
 ケアマネジメントについては、併設事業所が9割を占め、特定のサービスへの偏りがあるなどの問題が生じている一方、業務が多忙、支援困難ケースを抱えるなどケアマネージャーが抱える悩みも多くある。今回の改正では、資格の更新制、更新時の研修の義務化や担当件数の見直し等を行なったところである。

■ 被保険者・受給者の範囲
   最後に「被保険者・受給者の範囲」の問題だが、これは制度発足時からの課題であり、今回の改正法案をまとめる際にも介護保険を普遍化すべきという意見と慎重な意見があり、改正法においては社会保障に関する制度全般についての一体的な見直しと併せて検討を行ない、その結果に基づいて、平成21年度を目途として所要の措置を講ずることとしている。


Copyright(C)2006 NIPPON OMNI-MANAGEMENT ASSOCIATION
 
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