開催説明会 記念講演要旨

梶 元伸 氏が講演 「いきいき移住交流フェア2010」の開催説明会とともに実施した総務省 地域力創造グループ地域自立応援課 課長補佐 梶 元伸氏による記念講演は大変盛況でした。以下はその講演内容の要約です。(文責:事務局)

講  演
定住自立圏構想の進捗状況
梶 元伸 氏
総務省地域力創造グループ地域自立応援課 課長補佐
梶 元伸 氏

定住自立圏構想とは
 移住交流という言葉は、新しい響きをもって聞こえるが、JターンやIターンのような人口の移住・定住促進の取組みは、実はかなり以前から行なわれていたもので息の長い取組みである。ただ現在の状況においては、移住交流を促進する前提条件が大きく変わってきていると言わざるを得ない。それは、今日の状況が人口総減少時代に入ってきている、という点である。これは大都市圏もそうだが、地方圏においてはとくに顕著である。従って地方圏における移住・定住のニーズはますます高まっている、と言うことができる。今回の定住自立圏構想がそうした問題意識に対して応えることができればと願っている。
 さて、その定住自立圏構想とはどのようなものか、ということであるが、それは中心市と周辺市町村が連携して、住民の生活に必要な機能を確保していこう、という取組みである。

 このような取組みは従来からなされてきたところではあるが、今何故、定住自立圏構想か、については、今日置かれた地方圏の厳しい現状を放置できないとの問題意識に由来する。
 言うまでもなく、地方圏における人口減少は極めて大幅なものなのである。むこう30年間で2割もの人口減少が見込まれており、人口減少が進めば地域の活力は当然失われてくる、と言って差し支えないだろう。
 喫緊の課題は、地方圏における人口減少を食い止める、あるいは人口減少が避けられないことであるとしても、それを緩和するために何をするべきか、であろう。
 地方圏の人口減少を食い止めるために、東京圏への人口流出を防止する、あるいは地方圏への人の流れを創出する、これらは内需の振興にも寄与することになるわけだが、そのような人の流れを創っていく必要がある。
 そして、分権型社会にふさわしい社会空間を形成し、ライフステージに応じた多様な選択肢を提供する、といった問題意識のもとで、中心市と周辺市町村が相互に連携して役割分担をしていこうとしている。そうすることによって、全体として魅力あふれる地域を形成しようとするのが、今回お話ししているところの定住自立圏構想なのである。
 定住自立圏構想の一つの視点として、「選択と集中」、「集約とネットワーク」を挙げることができる。全ての市町村において、生活に必要な機能をフルセットで用意するのは、極めて困難なことである。ならば選択と集中という形で、中心的な市に機能をある程度集約し、周辺市町村は環境、地域コミュニティ、食料生産、歴史・文化等の観点から別の役割を担うこととし、この中心市と周辺市町村をネットワークで繋ごう、という考え方が定住自立圏構想である。総務省では、これを地方政策展開のプラットフォームと位置付け、この定住自立圏構想を推進していくため「定住自立圏構想推進要綱」をまとめている。

【参考】
「定住自立圏構想の概要」総務省平成20年7〜8月定住自立圏構想説明会資料
「定住自立圏構想推進要綱の概要」平成20年12月26日発表報道資料

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始めに中心市宣言
 まず中心市であるが、中心市は現時点である程度の生活に必要な都市機能について一定の集積があり、周辺市町村の住民もその機能を活用しているような、都市機能がスピルオーバー*している都市であることをその要件としている。人口は5万人程度以上、少なくとも4万人を超えていて、昼夜間人口比率が1以上、すなわち昼間の人口の方が夜間人口より多いことが必要である。
 周辺市町村とは、中心市と近接し、経済、社会、文化又は住民生活等において密接な関係を有する市町村を指す。定住自立圏は中心市と周辺市町村が定住自立圏形成協定を結ぶことによって自ら圏域を決定することになる。
 推進要綱ではまず中心市が、地域全体における生活機能を確保し、魅力を向上させる上で、周辺市町村の意向に配慮しつつ、中心的な役割を担うという意思を明示するため、「中心市宣言書」を作成し、公表することとしている。基本的には、三大都市圏の都道府県の区域外の市、を前提としている。この中心市の要件に該当する市は全国に243ある。

* スピルオーバー=あふれこぼれること。衛星放送の電波が対象区域外で受信できること。おこぼれ。副次影響。

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周辺市町村と定住自立圏形成協定を
 中心市宣言が行なわれたら次のステップとして、定住自立圏形成協定を中心市と周辺市町村とが1対1の関係で締結する。これは、「生活機能の強化」「結びつきやネットワークの強化」「圏域マネジメント能力の強化」の観点から連携する取組みについて、議会の議決を経て定める協定である。
 周辺市町村については特別の要件はなく、どこでもがなり得る。この協定には原則として期間の定めはない。廃止も可能である。このように定住自立圏構想は極めて柔軟な取組みを可能にしている。
 協定の中身についてであるが、そこには3つの視点ごとに、各地域の具体的な取組みを1つ以上規定することとしている。第一が「生活機能の強化」についてである。その圏域を住みやすい環境とするための取組みである。医療機会の確保や、保育所や介護施設などの福祉、教育、さらに雇用の場としての産業振興などがあろう。そうした機能を全ての市町村で整備することは困難なので、第二として、「結びつきやネットワークの強化」への取組みが挙げられる。中心市にある程度機能を集約した上で、周辺市町村との間のネットワークを強化するわけである。具体的には、地域公共交通や、ICTインフラの整備、道路等の交通インフラの整備といったネットワークの強化や、周辺市町村で生産したものを中心市で消費する圏域内での地産地消、さらには地域内外の住民との交流・移住促進といった結びつきへの取組みが挙げられよう。そして以上の柱を支えるためにも、それらの担い手となるべき人材の育成など「圏域マネジメント能力の強化」が第三の柱となっている。
 協定は、これらの取組みについて、その役割を分担し連携していくことが定められることになる。
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定住自立圏共生ビジョンの策定
 定住自立圏形成協定が成立すると、続いて定住自立圏の将来像および具体的な取組みを記載した「定住自立圏共生ビジョン」を策定し、公表してもらうことになっている。
 言うまでもなく定住自立圏の主役は市町村であるが、定住自立圏に関する取組みについては、必要に応じて、都道府県や総務省が助言・支援を行なうことになっている。とくに総務省は、定住自立圏形成協定等および定住自立圏共生ビジョンに基づく中心市および周辺市町村の取組みを対象として、必要な支援を積極的に行なっていく方針である。
 この定住自立圏構想は平成21年4月1日に始まったばかりであるが、平成21年11月16日時点で中心市宣言を実施している市は36を数え、さらに宣言を予定している市が続いている。そして定住自立圏形成協定の締結まで進んだ市町村が同時点で12県域*にのぼっている。

* 圏域内に中心市に該当する2つの市が存在する“複眼型中心市”(鳥取県米子市・島根県松江市)があるので、市としての団体数は13。
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全国の定住自立圏の取組状況
 定住自立圏形成協定の締結まで進んだ12の取組みの状況について、とくに協定の中に盛り込まれている移住交流に係わる政策分野を次に記してみる。

詳細=総務省「全国の定住自立圏の取組状況について(平成21年11月2日時点)」
 中心市周辺市町村移住交流に係わる協定
1長野県飯田市13 ○圏域内外の住民との交流及び移住の促進
・観光資源を活かした圏域内外の住民との交流など、にぎわい拠点の整備
2青森県八戸市> 7 ○地域内外の住民との交流・移住促進
・八戸市東京事務所を活用した地域情報の発信
・周辺地域の三八地方農業観光振興協議会の運営体制の充実などグリーン・ツーリズムの推進
・空き家バンクを構築し、空き家バンクを活用した移住促進
3秋田県由利本荘市 合併1市圏域※  移住交流に関する形成方針項目なし。
4埼玉県秩父市4 ○地域内外の住民との交流・移住促進
・子ども農山村交流プロジェクトの実施や、空き家バンクの整備など交流推進事業及び移住促進事業の実施
5山口県下関市 合併1市圏域※ ○地域内外の住民との交流・移住促進
・ブルーツーリズム及びグリーンツーリズムに係る取組
6滋賀県彦根市 4  次の項目を通して移住交流をも推進していく方針
○バイコロジー自転車道の整備促進
・バイコロジー自転車道の整備およびルート(マップ)の整備
○地域の生産者・消費者等の連携による地産地消の推進
・農産物の生産体制の整備および学校給食や直売所における地元農産物の安定的な利用拡大
7福島県南相馬市 1 ○地域内外の住民との交流・移住促進
・地域資源を活用した都市農村交流拡大と定住促進
8宮崎県都城市 宮崎県1+鹿児島県2 ○地域内外の住民との交流・移住促進
・圏域の観光・交流資源のネットワーク化及び都城志布志道路を活用した圏域内外の住民との交流及び観光の推進
○定住促進
・都城志布志道路を活用した産業の振興による定住ニーズに対応する居住エリアの創出
9鹿児島県鹿屋市 7 ○地域内外の住民との交流・移住促進
・誘客促進及び観光資源のネットワーク化の推進(スポーツ合宿が盛ん。さらに大会等の誘致・開催によるスポーツ交流を促進する)
10鳥取県米子市・島根県松江市 鳥取県1+島根県2  移住交流に関する協定項目なし。
11岐阜県美濃加茂市 1 ○地域住民の交流促進
・多文化共生の推進(定住外国人が人口の約10%を占めている)
12大分県中津市 大分県2+福岡県3 ○定住・移住促進
・定住・移住促進のための空家等の情報を圏域内で集約し、共同で情報発信。
○圏域内外の住民との交流
・圏域の交通ネットワークを活用した広域観光ネットワークを形成し、観光振興及び圏域内外の住民との交流を推進。
1つの合併市で1圏域を形成。人口最大の旧市を中心地域、他の旧市町村を周辺地域として「定住自立圏形成方針」を議会の議決を経て策定できる。
 ここに掲げた取組みは、けっして真新しいものではないが、複数の市町村がひとつの名前で協働して取り組んでいく、という点において従来より一歩進んでいると考えている。

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構想の推進に向けた財政措置
 定住自立圏形成協定を締結し、定住自立圏共生ビジョンを策定した中心市及びその周辺市町村の取組に対して、その共生ビジョンに記載された事業を支援するため総務省は必要な財政措置を講じることとしている。
 平成21年度の措置として、まず中心市については、生活機能等の集約・ネットワーク化を進めていくうえで、余計にかかってくる財政需要に対し、特別交付税措置をしていこうとしている。周辺市町村においても新たな財政需要が発生する可能性があるので、こちらにも同様に特別交付税措置を行なっていく予定である。
 地方債を使った支援もある。協定またはビジョンに基づいて行なわれる整備に対して当てられる、地域活性化事業債の元利償還金の一部を普通交付税措置していく、というものである。
 構想実現に外部人材を活用することは極めて大切なことで、圏域外から専門性の高い人材・ノウハウを確保し、活用するための経費に対しても特別交付税措置する。
 自立圏構想では民間資金の参加も促している。地域資金がその地域で活用されることを促すことによって、人口の定住ばかりでなく資金も当該地域に戻ってくる仕組みを構築すべきではないかと考えている。そこで協定またはビジョンに基づく取組みを推進するため公益法人等に出資してファンドを形成し民間事業者等に融資を行う場合、公益法人等への出資に要する経費に地方債を充当するとともに、その利子に特別交付税措置をしていく予定である。
 またふるさと財団が行なっている“ふるさと融資”(地域振興に資する事業活動で新たな雇用の確保が見込まれるものに対する無利子資金融資)を活用する場合には、融資限度額および融資比率を引き上げることも行なっていく。
 個別の施策分野においては、病診連携等による地域医療の確保や、へき地における遠隔医療、簡易水道の統合、などについても、それぞれ財政措置を用意している。
 さらに定住自立圏の形成に対応した辺地度点数の算定要素の追加や、情報通信基盤等の整備に対しても優先的に支援していく予定である。
 最後に、移住交流を進めていくためにも、定住自立圏構想が全国で展開されることを期待している。

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