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ホーム > 記念講演会要旨 記念講演会要旨![]() 「介護フェア2008」の開催説明会(1月30日)とともに実施した、日本大学医学部社会学系医療管理学分野 教授 大道 久氏による記念講演は大変盛況でした。 以下はその講演内容の要約です。(文責:事務局)
予防重視と効率化
医療制度改革の実質的な実施に移るのが平成20年度の4月からということで、既に成立した医療制度改革関連法の実施に向けた動きが急になっている。今回の制度改革の基本的な狙いは“超高齢社会の中で永続的な社会保障制度を実現する”こととされ、そういった中で、医療については予防を重視し、予防を徹底することで医療費の抑制を図ろうとしている。
しかし、医療の枠組みの中では徹底した効率化ということで病床の削減、とりわけ療養病床の縮減政策が既に採られており、受け皿となるべき地域のケア体制が極めて重要課題になっている。また、医療費を抑制せざるをえない社会保障財政というものがあり、医療費を効果的に抑制する必要があるということで医療費適正化計画というものが立てられている。 医療の効率化の中で制度的に取り上げられたのは医療計画制度である。4疾病5事業と言い、頻度が高く重要な疾病についてそれぞれ具体的な連携体制を都道府県が医療計画として策定し、効果が上がるように展開することとなっている。 長きにわたって皆保険体制を維持し、世界に冠たる社会保障の体制を構築してきたのだが、このままでは維持できないということから今回の法改正にもつながっている。具体的には、保険者の在り方が問われて、その再編、統合ということになった。被用者保険には組合健保、政管健保、国民健康保険があるがこの体制を大幅に再構築するわけで、都道府県単位に医療保険者を再編・統合するという路線になった。各県に保険主体を改めて置き、医療で言えば診療報酬点数の体系や給付範囲などを地域の実情に合わせようとしている。 生活習慣病に本格的に取組む
生活習慣病予防は医療費の適正化にも資するということだが、具体的には糖尿病、高血圧症あるいは高脂血症等の生活習慣病について健診・保健指導を保険者が義務的に行なうことになった。特定健診、特定保健指導と言われて注目されているのがまさにそれであり、具体的な数値目標を立ててその達成が得られなかった場合には、実質的なペナルティが掛かるような仕組みになっている。
一方の効率化という観点では、かなり直接的に医療費の無駄を省く施策が採られた。医療計画制度によって改めて体制の見直しを行なったのはそれにほかならない。ただ、従来のような考え方ではとても及ばないということで、例えば、それぞれの疾患についての総治療期間(年間の総入院日数、これは延べの入院日数というようなイメージでも良い)といったものを具体的に定めて、それに向けて有効な手立てを都道府県が講ずることになる。 また、在宅における医療またはケアを促進するためには在宅で看取っていただくことが重要な指標となるので、在宅看取り率なども数値指標として設けている。連携体制のひとつの重要な形として地域の医療機関同士で一体的、計画的な診療を行なう。つまり、複数の医療機関で連携を前提とした一体的な診療計画を立てることが推奨されており、この地域連携パスなるものの普及を図るとともに、実際にそれがどの程度実施されているかという地域連携パス実施率なども指標としてあがっている。 医療費の適正化を図る
医療費適正化計画というものを具体的にどういう形で行なうかというと、都道府県のそれぞれに再編された保険者がその中で特定健診、特定保健指導などを実施することになる。ここで各都道府県は、保険者と一体的な対応で取り組むということになるわけで、既に保険者協議会という組織ができている。その中で都道府県内の様々な実情、状況に応じて生活習慣病への対応もさることながら、現実に医療機関からのさまざまな診療報酬請求をオンライン化し、保険医療機関からの請求状況をしっかりモニタリングする。それで自らの組合、保険に参加をしている加入者がどのくらい病気になって、どのくらい医療給付を受けたのか、それぞれの医療機関にどのような状況で給付されているのかということをモニターするようにする。
そして、医療機関によって本当に効率的な医療を行なっているか、場合によっては組合員が本当に健康増進に努力をして、それで医療に掛からないような状況になっていて、医療費が効率的に使われているかといったところまで見ることで、結果的に都道府県から見れば医療費の適正化に通じることになる。 実績評価措置というのは、達成度に応じてさまざまな診療報酬上への影響、費用負担の度合いを変えていくということだが、当初、都道府県はかなり反発した。国と都道府県との新しい関係であり、都道府県の新しい役割、位置づけというものをそれぞれの県内で事業展開する立場からよく認識して対応していかなければならない。 第5次医療法改正
(1)医療機能情報提供制度
制度改正の中で医療法の改正が行なわれた。数年ごとに大きな改正が行なわれており、今回の改正は第5次医療法改正と言われている。 まずは、医療を受けられる立場の方に適切な医療、または医療提供に関する情報の提供が十分になされることが極めて大事だということで、医療機能情報提供制度が4月から実質的に運用開始される。各医療機関は、定められたかなりの項目にわたる医療機能に関する情報を都道府県に提供することが義務化された。都道府県によって実情は若干違うようだが、集められた各医療機関の医療機能に関する情報は都道府県のWebサイトに掲載される。 病院について言えば基本項目で56項目あり、それぞれの項目にかなり具体的かつ詳細な項目、延べで数えれば数百項目ある。これが行政の枠組みの中で、フォーマルなWebにアクセスすることで提供される。医療機関には定められた項目に沿った情報提供が制度化されたわけで、そんな中でしっかりと医療機能を確保しなければ医療を受ける側の方から“選択されない”ということが現実になったことは大変重要なことである。 (2)4疾病5事業で連携体制を構築 有効策のない医師不足
医師不足への対応についてはなかなか有効な手立てがないが、それぞれの都道府県に医療対策協議会が設置されることが制度化されることになった。しかし、こうした組織を作ったからといって医師不足が直ぐに解消されるというわけでもないので、今後とも解消への努力が続くと思われる。
わが国の、法人制度そのものの見直しについても概ね定まった。今回の改革では社会医療法人というものが出現し、出資額によって規制を受ける別立ての医療法人格と、従前からある医療法人との3種別が今後並立する。従来、医療の不足した地域を行政が補うということで、自治体の病院がある程度普及していたが現在は1,000病院を切っている。医療事業での赤字は自治体行政に連結して決算が行なわれ、場合によっては自治体そのものが破綻するといった状況が現実のものとなっている。そんなことから、各自治体とも病院事業にも強い経営改善を求めるが、実をあげなければ病院経営の見直し、廃止といったことが実際に行なわれることになる。社会医療法人のような民間の医療法人が合理的な経営を行なってくれるのであれば、そこに委譲することも重要な選択肢となるといったことも想定されている。 身近な医療機能を果たす有床診療所
診療所でありながらベッドを19床まで持てる有床診療所は、最盛期には25,000施設もあったが激減している。実際には無床に転換しているのだが、毎年1,000施設近くが閉鎖しており、12,000〜13,000施設にまで落ち込んでいる。わが国の分娩数は100万件ほどあるが、そのうちの45%以上はこの有床診療所で行なわれてきており、重要な役割担っていた。ただ、今回の医療法改正まで “48時間までしか入院はできない”といった規制があったのだが漸く撤廃された。
有床診療所は、身近でアクセスも非常に良く地域密着型であり、しかもその診療所の院長は患者さんの顔と名前が一致するのである。つまり、有床診療所というのは顔の見える医療を行なってきた機関なのだ。しかし、診療所入院基本料が病院の半分程度ではやっていけないため、みな閉めてしまうのである。有床診療所は地域に密着した身近な医療機能として、また、地域での介護事業展開の上でも重要な機能を果たす可能性を持っていると思う。 療養病床の大幅な削減政策
「実態として医療は終わっているのだが、家族の受入れ等が悪いために退院できない患者さんが少なくない」と20年以上前から言われているのだが、今回改めて、本来、医療が必要な患者さんに入院を継続していただくという範囲に留めることで、かなり激しい政策が展開される。38万床の療養病床を、4年後までには15万床に削減するという政策である。差し引き20万床強の入院患者さんがどこかに行かなければならないということになり、ここが大変重要な課題で、これが療養病床再編の問題と言える。
平成24年(2012年)を目途に介護老人保健施設とケアハウス、そして居住系サービスといった体系に移っていただくというのが昨年(平成19年)出た施策だが、ここの受け皿となるべき新しいサービス体系をどうするのかということが問題である。まずは老人保健施設だが、老人保健施設が受入れるにはキャパシティが不十分で、そのほかの受け皿が整備されているところである。そして、これを各都道府県がしっかりと整備する行政計画が地域ケア体制整備構想なのである。療養病床に入院しておられる方々のニーズ、病態の把握から方向性を探っているというのが本当のところだ。 「現段階ではそんなに縮減することはできない、どう考えてみても20万床はおろか25万床くらいまでしか縮減できないのではないか」と言った意見が実際に療養病床を運営されている立場の方からは強く、これを見直すような動きが政府にも出てきている。介護施設たる老人保健施設にそれなりのシフトが図られようとしており、新しく転換型老人保健施設というものが出現する。ただ、旧来から老人保健施設をやっておられた方と転換型との介護報酬に差があり、少しややこしくなっている。 医療療養病床、介護療養病床のほかに回復期リハビリテーション病床が2万床ある。これは、一般病床からも療養病床からも取得できる診療報酬上の枠組みで、激変の緩和にそれを活用しようと期待する向きもあるようだ。いずれにしても、医療難民、介護難民と言われるような人々を産まないような最大限の努力が求められている。 “外付け”という観点での体制作り
介護施設の中で医療を行なうということには今までかなり制約的だった。それが少しは見直され、今後の流れから言えば外から必要な医療をしっかり行なう。ただし、そう簡単に病院に入院はできないということなのである。
基本は在宅に向けた大幅なシフトである。在宅(自宅やケアハウス、有料老人ホームなどの居住系サービス)の方々のところに外から入り込んで、有効な医療を提供する。分かりやすい言葉で言うと“外付けの医療”というような言い方をする。施設の中に高齢者の方を収容して医療を行なうといった体制の従来の医療から、まずは在宅で生活していただいて、外から医療が入っていくというスタンスでの医療展開を行なうということである。 そこで、在宅の場で主治医を明確にするため在宅主治医という概念がでてきた。在宅で生活されておられる方々の主治医を決め、必要なときに出向くという、 “外付け”という観点での体制作りをしようということで在宅主治医という言葉が使われる。診療所の医師は自分の診療所を開業して、患者さんが来るのを座って待ち、外来の患者さんを診るというこれまでの医療では駄目で、むしろ診療所の外に出向き、在宅の方々のところに医療を提供していってもらおうというものである。 |
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