開催説明会 記念講演要旨

柏市長 本多 晃 氏が記念講演 「自治体総合フェア2010」の開催説明会とともに実施した、内閣官房 地域活性化統合事務局 内閣参事官 河本 光明氏による記念講演は大変盛況でした。以下はその講演内容の要約です。(文責:事務局)
記念講演
活力ある地域社会の実現に向けて
〜環境モデル都市構想の展開と地域活性化〜
河本 光明 氏
 内閣官房 地域活性化統合事務局 内閣参事官
 河本 光明 氏

<地域主権>が基本方針に

 現在の政権の基本方針のひとつが〈地域主権〉である。従来は〈地方分権〉という言葉が使われていたが、〈地域主権〉には、地域が基本的なところは決めていくのだというように、従来に比べてより積極的・主体的に進めていこうという考え方がある。明治以来続いてきた中央集権といった体制から脱却するわけで、そのためには責任も伴うということであり、責任をもって地域で判断をしていく構造に変えていこうとしている。
 これから地方をどのように考えていくかという新しい内閣としての地域主権の具体的な戦略はまだ公表されていないが、“地域成長力の強化”、“地域生活基盤の確保”、そして“低炭素社会づくり”という視点が今後も重要であることに変わりはないだろう。そして、これから進むべき“低炭素社会づくり”についてもよりグリーンな社会をつくることが、同時にその地域の成長や地域の活性化に結びつくような視点で考えていく必要があるだろう。
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日本の温室効果ガス削減中期目標

 コペンハーゲンで開催されているCOP15においてポスト京都の議論が始まっている。それに先立って行われた国連気候変動首脳会合における鳩山総理の演説での考え方が、この瞬間も日本の基本方針になっているが、まだ合意に至るにはさまざまな課題があると思われる。日本の方針のベースとなっているのは『温暖化を止めるために科学が要請する水準に基づくものとして、1990年比で言えば2020年までに25%削減をめざす』という中期目標だ。そして、その前提となるのは『すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意』である。つまり、現在の京都議定書のように温室効果ガスをたくさん出しているアメリカ、中国、インドなどが参加していない枠組みでは駄目で、そういった国々が入ったものであれば日本もこの目標を実行しようということである。
 25%削減という数字は、できる、できないの検討の結果からでてきた数字ではなく、地球の崩壊を防ぐために必要なレベルはこうなのだという考え方に立っている。だから、我々としては国際的な枠組みができるのであれば是非とも達成していく必要があると考えている。しかし、25%を進めていくことが世界経済や我々の経済を停滞させてはいけないので、我々自身が新たな経済的な社会をつくりあげていくといったように前向きに捉えていく必要があるだろう。先進国は2050年にはマイナス80%を要求されているため、逆算していくと2020年にマイナス25%というのはやらなければいけない数字なのかもしれない。しかし、現実の世界をみていると本当にできるのだろうかといった具合であり、これは国を挙げて取組まなければ達成できない。
 この25%の削減目標は“真水”に森林吸収、排出権購入を含めたものなので、どのくらいを国内で減らして、どのくらいを海外から購入するかといったことは公表されていない。
 仮に国内だけでこれらの目標を達成するとした場合には、太陽光発電を現状の55倍に、新車販売の90%および保有台数の40%を次世代車に、新築住宅の100%を断熱住宅に、さらに既築の100%を改修しなければならないといった試算もある。
 CO2の大幅削減のためには、とくに大変なのは家庭部門と業務部門である。両部門ともに2005年までは40%前後の増加傾向を示しているので、それを大きく減らしていかなければならない。産業部門の場合は地域レベルで対応してもあまり意味がなく、「日本として鉄鋼産業の省エネはこうしていこう」、「化学やセメントは…」といった具合に日本レベルで捉えていかなければならない。しかし、家庭部門や業務部門、あるいは運輸部門も多くの場合そうかもしれないが、地域の中での取組みが非常に重要になってくる。地域の中にこれから25%削減していく上での大きな課題もあるし、解決するための鍵が隠されているということから、自治体を巻き込みながら温暖化対策を考えていこうという方向に向っていくだろう。もちろん、排出の割合で言えば産業部門が非常に大きいので、産業部門としての排出権取引や省エネの規制などは最も大きな課題として取組まねばならないが、家庭、業務、運輸部門については地域の中で対策を練っていくということが大きな課題になってくる。
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環境モデル都市

 低炭素社会と言葉でいうことは簡単だが、町の形、交通の形、住宅・ビルの形などといった社会を構成するありとあらゆるものを変えていかないと、当然ながら半減は難しい。他の地域に先行して低炭素社会を目指し、それを具体的に先取りしてつくっていこうという都市を支援する『環境モデル都市』が募集され、応募団体の中から2009年1月までに13都市が選ばれている。この際、温暖化対策を進めることが地域を疲弊させることになっては何にもならないわけで、地域が元気になるようなモデルをつくり上げることが国全体あるいは世界全体を削減の方向にもっていくことに繋がるのではないかとの考え方から産まれたものである。
 環境モデル都市には、北は下川町から南は宮古島市まで13の都市が選定されている。日本には1,800弱の自治体があるが、環境モデル都市にはこれらのリーダーとして取組んでいただきたいと思っている。

 13の環境モデル都市があるが、低炭素都市推進協議会の会長は北九州市長であり、市を挙げていろいろな取組みにチャレンジしている。北九州の場合はもともと工業都市で、公害を克服した経験もあり、今でも大きな産業の基盤があるので、それらとのコラボレーションは活発である。中心部から少し離れた響リサイクル団地は北九州エコタウンということで廃棄物対策などに取組んでいたが、さらに地球環境関係の取組みにまで広げていこうとしている。
 北九州はもともと産業都市であり、どちらかというと産業系の取組みの蓄積はあった地域なので、それをさらに推進するとともに、市民レベルでの取組みの強化も目指している。八幡東区の東田地区といって、新日鉄があった地域を開発して低炭素型のモデル地域にするとか、小倉北区の城野地区に200年住宅を建てる低炭素先進モデル『200年街区』をつくるといった具合に、街区全体を低炭素型に変えていく取組みに熱心である。
 これからは、どこの地域でも低炭素の取組みが進んでいくことになると思うが、見えないところで「ボイラーが省エネ化しています」と言われても、それは頭では分かっていても、市民レベルの目線で、実感として分かりにくいということもあるだろう。そこで、市民にも分かりやすいシンボル的な活動が必要となる。北九州の場合、市民が歩いたりする紫川の周辺エリアに太陽光発電、風力発電やLED照明といったものを集積させ、それをひとつのモデル地区にしていこうといった『紫川エコリバー構想』が推進されている。

 横浜も環境モデル都市のひとつである。もともと、ごみの排出量を3割削減するということから市民レベルの分別に取組み、目標よりも早くごみの削減に成功したという成功体験を持っている。聞くところによると、万の単位の市民説明会を実施し、市民の中に入ってごみの問題に対応してこられたということで、温室効果ガスについても市民力を発揮して問題解決を図ろうとしている。
 来年11月にAPECの首脳会議が横浜で開催される。COP15がコペンハーゲンで開催されているが、コペンハーゲンの会議が終わっても温暖化問題の細かな交渉は残るであろう。そうすると、来年も引続いて世界の温暖化問題にとっては非常に重要な局面が続くのではないだろうか。そういう中にあって、中国、アメリカを含むAPECが日本の横浜で開かれるので、APECの場でも横浜市の環境モデル都市への取組みを多くの国の方々にしっかり発信して欲しい。

 京都は京都議定書の地元でもあるので、低炭素社会づくりのトップを走るという決意で進めておられる。京都の場合にはマイカーの使用を抑制し、歩くか又は可能な限り公共交通機関を利用するということが、非常に大きなテーマのひとつになっている。また、四条通という繁華街のトランジットモール化、すなわち一般の車両が入ってこられないようにし、公共交通機関と歩くだけにしようという取組みも行われており、“歩行者主役のまちづくり”が進められている。
 また、京都には“木”の文化が根付いており『平成の京町家』の開発も検討されている。木造の建築というのは構造上や断熱性の問題などもあるが、『平成の京町家』は風を上手く使い、パッシブソーラーという形で太陽の熱エネルギーを蓄積するなど、木造であっても快適な暮らしができるような工夫が施されている。木造にはメリットもデメリットもあるわけで、そのデメリットのある部分を京都の知恵によって補って、木の文化を引続き普及させていこうというものである。京都には“町家”を大切にするという考え方もあるためか、建て替えるにしても何をするにしても木材−とくに国産材、地域材−を使って“まち”をつくっていこうという地産地消の取組みも行われている。
 さらに国内の山を再生していくということが今回の経済対策で大きなテーマになっている。排出の減少という意味では山を管理しても関係がないのだが、管理された山でなければ吸収源として認めないというのが森林吸収の国際的なルールである。しかし、日本の場合には国産材がまったく使われていないということもあって山が荒れ放題になっており、それをもう一度立て直して、木材の自給率を上げていこうというのである。これは木材を供給する側についての対策だった。しかし、そこで出てきた木材を使って住宅やさまざまなものを作っていく、という全体のプロセスが回って初めてCO2が吸収されるということになるので、山を護ると同時に“まち”の中でも木を使った文化をつくっていくことが非常に重要となる。

 北海道の下川町の場合は環境モデル都市としては最も北にあり、広大な森林が広がっている。きちんとした森林であるという森林認証を取り、民間企業から資金を得て森林を管理し、それによるCO2のクレジットを企業に渡すという取組みを熱心に行っている。また、坂本龍一さんが代表されている“more trees”のようなNPOと連携した活動も行っている。このように、都会にある人的資源や企業との連携をいかに行っていくかということが非常に大きな課題なのである。坂本さんのように有名な方が代表になっていただければいろいろな方々に興味をもっていただけ、協力の資金を原資とした活動が可能となるのだ。

 このような取組みは、13都市だけに限らずもっともっと広がっていかなければならないし、事実、広がりを見せ始めている。日本は25%削減を表明しているが、具体的にどのように行っているのだということを地域レベル、都市レベルで発信していくことが重要となる。そういう意味でも、環境モデル都市は、単に日本で評価されるだけでは駄目で、世界からも評価されるようにならなければならない。

 参考:環境モデル都市(13都市)の主な取組 (PDF)
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低炭素都市推進協議会

 環境モデル都市に続いて、地域レベルで様々な低炭素社会づくりの取組みを行っていこうとする『低炭素都市推進協議会』があり、現在168団体が加盟している。市区町村は85団体だが、今後もっと増やしていき、地域での低炭素社会づくりへの取組みをさらに強化していきたいと考えている。
 また、協議会の下にワーキンググループがあり、具体的なテーマに沿って検討しているが、そこには民間企業にも入って、議論に参加していただいている。現在は街区レベルでの低炭素化の実現のための都市・地域の低炭素化施策推進WGと、地域の活性化に資するような新たなビジネスモデルの構築・普及を目指すグリーン・エコノミーWGが設置されている。
 本来、低炭素の問題は国として責任を持って行っていくべきものだが、自治体の協力あるいは自治体の取組みが重要となってくる。そこで、現在の地球温暖化対策推進法においても、主要な地方公共団体に国の長期目標、2050年までに現状比60〜80%削減を踏まえた温室効果ガス削減計画を策定することが求められている。低炭素都市推進協議会は、これらの計画を作るにあたって、よりハイレベルな計画をつくって実行していこうという自治体の集まりである。“再生可能エネルギーを使用する”、“事業者、住民の活動促進”、“公共交通機関の利用や緑化等の地域環境整備”などは、自治体として行っていかなければならないということが、法律上にも位置づけられている。
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これまでの記念講演会