開催説明会 記念講演要旨
2011年11月22日(火) ホテルグランドヒル市ヶ谷にて
「自治体総合フェア2012」の開催説明会とともに実施した、草加市長 田中 和明 氏による記念講演は大変盛況でした。
以下はその講演内容の要約です。(文責:事務局)
「魅力ある地域社会の実現
〜安心して楽しく暮らせるまちづくり〜」

草加市の概要
草加市は埼玉県の南東部に位置し、面積が27.42Km²、人口が244,124人(10月1日現在)、市域の90.4%が市街化区域で人口密度の大変高いまちである。
徳川時代、市域は殆んど幕府の直轄の天領であった。400年ほど前の慶長11年(1606年)、奥州街道第二の宿場町として大川図書などが開宿に着手したことにより草加が発展を始めた。また、俳人・松尾芭蕉が『奥の細道』で記したように、最初に足をとめたのも草加と言われている。明治時代に入り、後の日光街道となる奥州街道が国道として整備され、明治23年の東武鉄道の開通にともない、草加は駅を中心に今日の礎が築かれたと言われている。
昭和30年代に入ると化学薬品、製紙関連工場が相次いで進出し、県内でも屈指の商工業都市となり、昭和33年11月1日に埼玉県で21番目の市としてスタートした。市制施行当時、34,878人だった人口も10年後の昭和43年には10万人を、31年後の平成元年には20万人を突破した。昭和37年には、高度経済成長の波を受け人口の集中化が始まり、当時、東洋一と言われたマンモス団地 "草加松原団地" が建設された。また、東武鉄道と地下鉄日比谷線の相互乗り入れにより、人口の急増に一層の拍車がかかり、現在も人口は微増の傾向にある。
草加市は、海抜が2〜4mの殆んど平らなまちで、昭和30年以降、急激な都市化に伴い田畑の保水機能が失われたこともあって、台風時には甚大な浸水被害が発生してきた。昭和54年、56年、61年、平成3年と4回にわたっての河川激甚災害対策特別緊急事業で、総事業費800億円ほどにのぼる河川改修や放水路の整備が行なわれた。また市としても、国・県からの補助を受け、公共下水道の促進や排水ポンプ場の設置など様々な対策を優先的に行なってきた。また、平成10年に完成した2本の綾瀬川放水路の整備により、甚大な被害が発生した際と同程度の降雨量を記録しても、現在では殆んど浸水被害が発生しない状況になっている。
草加市の魅力
文化面では『奥の細道』の中に「其日漸草加と云宿に辿り着にけり」と詠まれている関係で、奥の細道・芭蕉後援会や奥の細道文学賞など俳人・松尾芭蕉に因んだ事業を展開している。また、平成16年には草加宿を訪れる旅人をもてなすという当時の人々の気持ちに倣い、「いろいろな人に草加に来てもらいたい」、「おもてなしをしよう」ということで "今様・草加宿事業" に着手した。この事業は現在も継続中で、今年の11月3日にも宿場まつりを開催し、市内・外の多くの人々に楽しんでいただいた。
このほか、草加は平成5年に音楽都市宣言を行なっており、音楽を取り入れたまちづくりを進めている。世界の一流ハープ演奏者が集まる "国際ハープフェスティバル" を毎年11月に行なっており、これは国内最大級のもので23回開催している。
地場産業としては、"草加せんべい"、"ゆかた"、"皮革" などがある。
このほか、地場産の枝豆や小松菜などの野菜なども人気がある。
国道4号線を東京から北上してくると、都県境のあたりで4号バイパスと旧4号線(県道足立越谷線)に分岐しているが、旧4号線をそのまま進むと右手に草加のシンボルである大きな松並木が現れてくる。昭和45年頃には800本ほどあった松並木は排ガスの関係などで200本ほどになってしまったが、市民有志が100本の松を補植したのがきっかけで、その後多くの市民の方々による補植が行なわれ、現在では622本となっている。スカイツリーが634mなので、あと12本補植すれば634(むさし)に因んだ634本の松並木ということになり、もうひとつPRができるのかなと思っている。現在は1.5Kmの遊歩道として整備されており、昭和62年には、建設省から日本の道100選に選定されるなど市民の憩いの場となっている。
子育て力・教育力についての取り組み
草加市が重点的に取り組みを進めているものを紹介させていただく。どの施策も草加市民の協力なくしては成り立たないものと考えている。
まず、草加市の子育て力・教育力についての取り組みとして、「草加で子供を育てたい」とか、「教育を受けさせるなら草加」と言われるようなまちを目指したいと思っている。この施策の対象となる草加市の0歳から14歳の人口を平成8年と比較すると微増という傾向である。多くの自治体では減少しているようだが、草加市ではこのような状況でありひとつの特徴と考えている。その要因としては、第2次ベビーブーム世代が子供を持つ年齢に達したこと、そして、そういう年代の人々が通勤に便利な草加市に住所を置いていることなどが挙げられる。ただ今後については、草加市のこの年代の人口も減少に向かうものと推計はしている。こうした状況の中で一人ひとりがすくすくと成長し必要な基礎学力を身につけ、将来は草加や日本の発展に資する人材となってもらうために次のような施策を検討、実施していきたい。
まず一つ目はこども医療費の年齢の拡大である。これについてはすでに取り組んでおられるところもあるが、現在、草加では通院は0〜6歳まで、入院は0〜15歳までが無料になっている。これを、中学校を卒業するまで入院も通院も無料にするということにしたい。子育ての経済的な負担を軽減しようというもので、平成24年度から実施するため手続きを進めており、医師会等との調整を行なっている。
次に児童・生徒の基礎学力向上である。これには教育委員会にも頑張ってもらわなければならないが、教育環境の整備を市も行ない学力向上を目指していきたい。耐震補強工事はまだ100%にはなっていないが、耐震補強を全校実施するということで24年度は進める予定である。
三つ目の幼稚園の就園奨励費補助金の一部復活は、一部廃止した補助金を復活するもので、若い世代の負担を軽減するために行なうものである。しかし、子育てや教育など子どもたちの成長や人格形成においては、乳幼児から児童・生徒まで一貫した施策が必要であり、学校と市が縦割りにならず、取り組みがスムーズに連携できる仕組みづくりの必要性を痛感している。そのために、平成24年度から教育長直轄の "子ども教育連携推進室" を設置すべく、12月定例会に組織改正の議案を提出することになっている。 "子ども教育連携推進室" は幼稚園・保育園と小学校、小学校と中学校が連携して、スムーズな教育が行なえるように取り組んでいくものである。幼稚園と保育園の2年間、小学校の6年間、中学校の3年間の11年間を "こども教育11(イレブン)" と呼んでおり、この11年間の連携強化を図ることによって、最終的には学力の向上につなげていきたいと思っている。
お年寄りが元気に暮らせるまちを目指して
草加の高齢化率はここ数年、毎年1%前後で上昇しており、平成8年に7.8%であったのが現在では19.1%、10年後の平成33年には25%が65歳以上になるという推計が出ている。全国の高齢化率は23.2%だが、草加は比較的若いまちで平均年齢も42.6歳となっているが、これからの高齢化に向けてお年寄りに元気に過ごしていただくための施策にも取り組んでいかなければならない。
まず、 "おしゃべりボランティア・買い物ボランティア" といった制度を社会福祉協議会やシルバー人材センターと連携しながら確立していきたい。また、ゴミを出すといっても足の不自由な方や障害のある方、高齢者の方々にとっては不便なので、 "ふれあい回収" といって行政がお宅にゴミを取りに行くというような制度も必要かと思っている。
次にコミュニティバスの運行である。狭い市とはいえ、端から市立病院へ行くにはタクシー代もかなりかかってしまうことになるので、ミニバスで足の便の悪い地域を解消したい。コミュニティバスを導入し、できたらワンコインで公共施設や市立病院、買い物へ行くための足を確保できればと考えている。
草加には36団体1,500名ほどのグラウンド・ゴルフの会員がいて、晴れた日には公園や学校を使ってグラウンド・ゴルフが行なわれている。愛好者は多いが公認のグラウンド・ゴルフ場がないため、栃木や千葉の専用グラウンドへバス旅行で出かけている。そこで、市内4ヵ所ほどに公認のグラウンド・ゴルフ場を設ければ、あまりお金をかけずに、循環するコミュニティバスを使って色々なコースを楽しんでいただけるのではないかと考えている。本年、12月には約3,800m²の、1ヵ所目のグラウンド・ゴルフの公認コースを設置する予定である。
市民が安心して暮らせるまちづくりを目指して
隔年で実施している市民意識調査で施策への重要度を聞いたところ、 "市立病院の充実" 、"防犯対策の推進" などが挙げられている。こうした意向を受け、"市立病院の充実" についてはまず新医療センターの建設を行なっており、平成24年4月、オープンの予定となっている。市立病院の隣にこの新医療センターを建設しており、センターの名称は『心臓・脳血管センター』と称し、救急・高度医療に特化し、保健センターに併設している夜間救急診療所を移転し、小児に特化した『子ども急病夜間クリニック』や消防の『救急ステーション』の設置も行なっていく。本センターは5階建てで、1階は消防の『救急ステーション』と『子ども急病夜間クリニック』が入る。この『子ども急病夜間クリニック』は草加八潮医師会の協力を得て、平日は午後7時30分から10時30分まで、土日・休日は午後6時30分から10時30分まで開設するものである。2〜3階は集中治療室で、2階は8床を備えた循環器センター、3階は12床を備えた脳卒中センターである。4階は透析ベッド40床を備えた腎臓センター、5階は研修施設と院内の保育施設を設置する。
二つ目は "交通事故対策の充実" である。草加、八潮管内は大変交通事故の多いまちで、近年、死亡事故が増加したこともありその対策に取り組んでいきたい。しかしこれといった特効薬はないので、地道な啓蒙・啓発活動をしていこうと思っている。
三つ目は "防犯体制の強化" である。市民によるパトロールの支援など、市民とともに防犯活動を進めていこうと考えている。去る8月3日にも暴力団事務所での発砲事件を受け、パトロールを強化していきたい。また、埼玉県でも暴力団排除条例を制定し排除を進めようとしているわけで、草加市としても2つの暴力団事務所に一日も早く撤退してもらう、というような活動を進めていかなければならないと思っている。
市民力をさらに高める
草加市には「自分たちのまちはみんなでつくっていきたい。だからまちづくりに関わりたい」という方が沢山おられる。まちづくりを行なう上で人材は貴重な要素となっている。そういった方々が沢山おられるということは何物にも代え難いところである。そういった市民の方々と一緒にまちづくりを行なうために、平成16年に『草加市みんなでまちづくり自治基本条例』を制定した。このような条例は全国的にも少ないのではないかと思っているが、本条例は市民とのパートナーシップを前面に掲げている。条例では市民活動を支援するための基金の設置、まちづくりの拠点つくりなどが盛り込まれている。そして、この規定に基づいて "まちづくり応援基金" の設置や市民活動交流センターの整備などを行なってきた。
現在、この条例を所管する部署は「みんなでまちづくり課」というところで、名前のとおり地域の皆さんが自分たちでまちづくりを考える会議の場へも参加させていただきながら、必要があれば担当部との橋渡しなども行なっている。
地域経営という視点を持つ
草加市の財政状況を見ると、基本的には他市の状況と傾向はあまり変わらない。歳入は国や県からの補助金などの依存財源が増加しており、歳出についても生活保護費等の民生費の増加が特徴的である。こうした中、今までのように小手先だけで行財政改革を進めるということには限界があるのではないかと考え始めており、サービスの在り方自体を見直すことが必要ではないかと考えている。
今までのように右肩上がりの税収があり、財源も比較的余裕があった時の認識を、職員はじめ議員も市民も変える必要があると思っている。もちろん市民サービスを低下させるというようなつもりはないが、限られた資源の中で最大のパフォーマンスを実現するために制度を見直し、同じ内容でも手段を見直すことが必要となろう。それを実現するためには意識を変えていくことが最も重要であり、そういったことを実現するために地域経営という言葉を使い始めようと考えている。
これまでに行財政改革の大綱を作ってきたが、今回、それに代わるものとして『地域経営指針』の作成を検討している。これまで草加市では行財政改革を積極的に推進してきており、構造改革特区への提案、事業仕分けの実施などの活動が他の自治体などから評価されてきたと自負している。従って、そういった改革の必要性は十分に理解しているところである。
草加市の直近の行財政改革では、コスト削減や事業費の削減などに関して目標値を設定して、その達成状況を測定してきた。その結果、目標値に対しての85%近くの達成状況で、それを市民や大学教授などで組織している "行財政改革推進委員会" に報告した。そこでの意見としては、「市が行財政改革を行ない、それなりに目標を達成したのは理解できるが、それが果たして我々の生活にどのような影響があったのかが分らない」、「そういった改革にどれほどの意味があるのか」といった指摘もあった。何のための行財政改革なのかということをきちんと意識するためにも、その目的である地域の利益、市民の利益を再確認するために、敢えてこれまでの行財政改革という言葉を使わずに、『地域経営』という言葉を使い始めた。
その内容については若手職員によって、現在、庁内で検討をしているところである。簡単に言うと「市民から預かった税を活用し、それを使ってまちづくりを行ない、最終的には税を拠出した市民にその利益を還元する」というごく当たり前のことである。平成24年度からは "総合政策課" の中に "地域経営室" を設ける予定である。従来の行革は事業費削減など市役所内部が中心だったが、"地域経営室" は地域の資源の開発や活用など地域全体を対象として取り組むものである。
災害に強いまちづくり
3月11日に発生した大震災で多くの方々が被害を受けており、1日も早い復興・復旧を願っているが、草加では被災者支援基金条例を制定し、支援基金を設置した。設置することになった背景は、当時、日本赤十字などの団体への寄付が行なわれていたが、草加市に避難されている方々や被災地の復興に直接役立ててほしいという市民の善意の声があったことが挙げられる。そこで、草加市では6月定例会で被災者支援基金を設置し、ご寄付いただいた市民の方々の意向に沿って被災者支援基金に積み立てている。今回の災害だけではなく、今後起きる災害に対しても被災者の支援をしていくというもので、基金は市から2,000万円を拠出しスタートした。11月17日現在、52団体・個人から約733万円もの寄付をいただいている。
3月11日に発生した東日本大震災という未曽有の大災害を受け、"平和な日本においても災害によっていつ命を奪われてもおかしくない" というように市民の意識が変わってきたのではないだろうか。人間が造った原発なのに人間の手に負えなくなったり、情報の開示の遅れや基準の不備等により、人の目に見えない放射能に対する恐怖に人々は曝されている。これらの市民は大震災や放射能というあまりにも大きな脅威を前にして、これまで自分勝手に生きてきたつもりだったのが、何かに頼りたいという気持ちが大きくなってきたのではないだろうか。国は大きすぎて頼るべき存在とはなりえず、より身近な市町村こそが、そんな市民に応えられるのではないかと思っている。そして、その期待に応えるためには強い自治体であることが必要であろう。
市役所は耐震補強が行なわれていないので市役所の建設や危機管理体制の充実も含めた "強い市役所" を作っていかなければいけないのではないかと思っている。また強い結束力が必要となる。各町会あるいは各自主防災組織において防災訓練は実施しているが、消防だけではなくて行政も中に入った防災訓練が必要ではないだろうか。ありきたりな訓練ではなく、「障害者の方、高齢者の方の避難はどうしたらよいのか」、「民生委員を通じてどのような避難をさせればよいのか」といった訓練も今後は必要となろう。また、避難する場所も明確にするような訓練も必要だということで、"強い結束力" を持って対応していかなければばらない。
強い市役所・結束力・財政力づくり
そして、"強い財政力" である。草加にはまだ220人ほどの被災者の方がおられるが、その方々に被災者支援基金から支援金を支給している。また、ボランティアのバス代等の費用も社会福祉協議会の方に支援金を使って補助しているが、今後起こりうる災害に対して強い財政力を持っていなければならないということで基金も積み立てていくのは当然だが、多くの方々に理解をいただきながら寄付を仰いでいき、"強い財政力" を持っていきたいと考えている。
強い市役所づくり、強い結束力づくり、強い財政力づくりというものをこれから掲げていかなければいけないと思っている。第三次草加市総合振興計画の中で草加の未来像である『快適都市—草加—』だけではなくて、これからは『災害に強いまちづくり』といったものも市民目線に立って、効率的、効果的な行政運営を行なっていかなければならないと考えている。
これまでの記念講演会
- 自治体総合フェア2011
市民提案と行政提案 〜双方向からの公民連携のこれまでとこれから
和光市長 松本 武洋 氏
- 自治体総合フェア2010
活力ある地域社会の実現に向けて 〜環境モデル都市構想の展開と地域活性化〜
内閣官房 地域活性化統合事務局 内閣参事官 河本 光明 氏
- 自治体総合フェア2009
活力ある地域社会の実現 〜公民学連携と環境共生によるまちづくり〜
柏市長 本多 晃 氏
