古くから語り継がれてきた言葉や、かつて社会をにぎわせた出来事には、現代の仕事や人間関係を考えるヒントがあります。 本連載では、「温故知新」をテーマに、時代を超えて変わらない人や組織の本質を見つめ直します。 執筆者は、経営教育・能力開発の分野でコンサルティング、講演、執筆活動に携わってきた本田有明氏。 小説・児童書の分野でも著作を重ねてきた筆者が、長年の経験と幅広い視点から、世代論や流行の言葉に振り回されず、人や組織を見つめ直すためのヒントをお届けします。
(文:D-OMNi編集部)
目次
タイトルの「故きを温ねて新しきを知る」=温故知新という言葉は、ほとんどの方がご存じだろう。 孔子の『論語』に記された有名な一節である。 過去の事象や知恵に学んで現代の状況に対処する必要性を説いたもので、言われてみればごもっとも。誰もが納得するだろう。 この教訓をもとに、現代のさまざまな問題を考えてみようというのが本稿の趣旨である。 初回は、世代論を扱うことにする。 Z世代なる言葉を耳にするようになったのは、いつからだろうか。 新語・流行語大賞の上位にノミネートされたのは2021年のことだから、すでに時代遅れになりつつあるといってもよい。 そのころ筆者のもとにも、「Z世代にフォーカスした人材育成の話を」との研修依頼が続き、ちょっと辟易した覚えがある。 世代論については、ネットで閲覧できる程度の知識をもっていればよい。過剰に反応して十把ひとからげの色眼鏡で人を見る弊害のほうが大きいからである。
過去半世紀ほどを振り返ると、わが国の世代論で最も反響が大きかったのは「新人類」というネーミングだった。 もとは一風変わった若者をさす言葉だったが、1984年に当時硬派の雑誌だった「朝日ジャーナル」に人気キャスター筑紫哲也が「新人類の旗手たち」と題してインタビュー記事の連載を始めたことで一躍世の注目を集めることになった。 2年後の1986年には新語・流行語大賞の大本命となり、時代の支持を得て大賞に輝いた。 当時の若者たち、たとえばプロ野球界では西武ライオンズの渡辺久信(のちに西武監督)、工藤公康(のちに福岡ソフトバンク監督)、清原和博たちが、ものおじしない性格、ファッションセンスなどで新人類の代表選手と目された。 当時、多くの職場で「新人類の若者とは言葉が通じない」といった大げさな嘆き節が聞かれたものだ。 ネアンデルタール人やクロマニョン人など歴史的に明確な分類は別として、そもそも人類に新人類も旧人類もあるわけがない。 あるのは今の若者と一昔前の若者とのわずかな違いだけであり、その違いを針小棒大に論じるのが好きな人がいる、という事実だ。 わずか10歳か20歳の違いで、年長者はよく「今どきの若者は……(だめだ)」と口にする。 これは紀元前の昔からの性癖のようなもので、エジプトのピラミッドにも、建設作業にたずさわった者による同様の文言が刻まれている。 「今どきの若者は……」と口にしたくなったときは、次のように続けるとよい。 「大したものだ。私たちが若かったときより●●が優れている」と。 そのような視点で自分の部下や後輩を見ようとする人たちは、世代論を超えて、今どきの若者と親和的な関係を結べる人たちだ。 十把ひとからげの世代論を口にする前に、いま目の前にいる若者を虚心坦懐に見つめてみよう。 そして自分から一歩前に踏み出し、手を差し伸べてみよう。 人間関係の基本が相互理解と共感であることは、時代を問わず真実であるに違いない。
この記事の執筆者
本田 有明(ほんだ ありあけ)
本田コンサルタント事務所 代表
1952年、兵庫県神戸市生まれ。慶應義塾大学哲学科卒業後、社団法人日本能率協会に勤務する。経営事業本部、情報開発本部などに所属し、部長職を務める。1996年に人材育成コンサルタントとして独立。主に経営教育、能力開発の分野でコンサルティング、講演、執筆活動に従事している。懇切丁寧な指導と明快な語り口調には定評がある。また作家として、小説・児童書の分野でも著作が多い。
本田有明のホームページ
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