第1回 中小企業経営のリアルと実践

第1回 中小企業経営のリアルと実践
組織とマネジメント
2026/07/01
連載:経営雑感―覚悟が人をつくる―

成長を続ける組織や個人の背中を追うと、ある共通項が見えてきます。

それは、組織を率いる「覚悟」「責任感」「実行力」です。

本連載では、具体的なエピソードを手がかりに、意思決定の裏側にある葛藤と、行動を加速させるマインドセット(思考の型)を紐解いていきます。
変化が激しい時代だからこそ求められる、シンプルかつ強力な「成長の原動力」を解き明かします。

(文:D-OMNi編集部)

日本経済を支える中小企業のリアル

私は、大学教員として都市部から地方に住むようになって早いもので15年目を迎えました。
多くの中小企業の経営者の方と交流する中で、中小企業こそ地方経済の担い手であると痛感するようになりました。
都市部にいてはなかなか実感できない貴重な体験でした。

今回の連載では、中小企業経営者の「戦略」と経営に対する「覚悟と責任感と実行力」について理解を深めながら「成長する組織と人に共通する『行動原理』」を明らかにしていきます。
同時にこの“中小企業的経営”が、これからの日本の企業・組織経営にとって、重要な意味を持つのではないかという点についても考察したいと思います。

皆さんは日本のビジネスシーンにおいて、「中小企業」という言葉からどのようなイメージをお持ちですか?
町の小さな工場や家族経営の商店を思い浮かべる人が多いかもしれません。

中小企業の定義は想像以上に広く、長年にわたり日本経済を支えてきたのは、この中小企業です。
そして今もなお、日本経済の「主役」そのものです。

まず、中小企業庁による「中小企業」の定義は、製造業では「資本金3億円以下または従業員300人以下」、小売業では「資本金5千万円以下または従業員50人以下」など、業種ごとに基準が異なります。

中小企業庁が刊行する「中小企業白書(2026年版)」によれば、日本国内の企業数のうち、実に99.7%(約336.5万者)を中小企業が占めており、大企業はわずか0.3%(約1万者)にすぎません。
さらに、日本における全就業者数の約70%が中小企業で働いており、GDP(国内総生産)の約50%を創出しています。

つまり、中小企業は単に「規模の小さい会社」ではなく、雇用の受け皿であり、日本経済の根幹をなすインフラそのものなのです。
また、地域経済の維持・発展、あるいは柔軟な経営スタイルによるイノベーションの牽引という重要な経済的役割も果たしています。

一方で、表のようにその重要なインフラである中小企業数は減少していることも事実です。

中小企業の経営における「強み」と「弱み」

中小企業の最大の強みはサブタイトルにあるように「経営者の覚悟と責任感と実行力」です。
この点については、今後連載の中で紹介したいと思います。

次に何といっても「意思決定の速さ」「柔軟性」です。
大企業のように何層もの承認プロセスや多くの会議を経ることなく、トップの決断次第で市場の変化へ即座に適応でます。
顧客との距離が近いため、個別ニーズに合わせた細やかな対応や、地域密着の深耕、さらには独自の専門技術を磨き上げやすいのです。

一方で、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の制約という構造的な「弱み」も抱えています。

大企業を比較すると資金調達力や知名度で劣るため、人材の確保や育成に苦戦しやすく、大量生産による「規模の経済性」を効かせることが難しいだけでなく、後継者問題など経営継続の課題も深刻です。

中小企業経営は「大企業の縮小版」ではない

経営資源の制約を前提とし、大企業とは「違う戦い方」を選択すること。
これが、中小企業が持続的な競争優位性を確立するための鍵となります。

次回からは、中小企業の経営の特色や中小企業から学ぶべき経営手法について深掘りします。

この記事の執筆者

橋本堅次郎(はしもと・けんじろう)

日本文理大学学長

専門分野は経営学、組織変革、流通経営。「組織と人の成長に貢献する」が長年のミッション。小売業・コンサルタントファームを経て役員・管理職として食品業(東証1部)等の上場に携わる。 人材育成事業を起業後、2011年より日本文理大学経営経済学部教授として学生と社会人の指導、地域活性活動を行い、ミッションの実現に尽力している。2021年4月より日本文理大学学長に就任。

キーワード:組織コミュニケーション学びマネジメント未来
連載名:連載:経営雑感―覚悟が人をつくる―
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