※本記事は、『オムニ・マネジメント』2025年5月号掲載内容を再編集のうえ掲載しています。
人口減少や少子高齢化が進むなか、自治体にはこれまで以上に難しい判断が求められています。
「アレもコレも」から「アレかコレか」へ――。限られた資源のなかで、地域の未来をどう描き、何を選び取っていくのか。
本連載では、自治体職員や自治体との協業に関わる企業の方に向けて、これからの自治体経営を考える視点をお届けします。
執筆者は、福島県磐梯町の旅する副町長をはじめ、公共・ビジネス・非営利の各分野で地域づくりに関わり、全国100以上の自治体と協働・共創を重ねてきた菅原直敏氏です。
(文:D-OMNi編集部)
前回、本コラムの目的として、
- 行政経営に関する認識共有・機運醸成
- 事例共有を通じた自治体職員・組織のエンパワメント
- 行政経営の体系化:
を示させて頂きました。
今回は、これらを目的とした理由、背景について掘り下げていきたいと思います。
画像:生成AI作成
行政経営に関する認識共有・機運醸成
まず、行政経営に関する認識共有・機運醸成についてです。
これは、自治体に「経営( マネジメント)」の必要性を普及させ、実践していく機運を醸成することです。
2000 年代に入った頃からでしょうか、自治体において経営という言葉がよく聞かれるようになり、名称に経営やマネジメントを冠する組織も散見されるようになりました。
一方で、経営という言葉に対する自治体職員の捉え方は多様であり、認識の齟齬があることも珍しくありません。
少なくとも組織名に経営やマネジメントという言葉を用いるのであれば、組織としての経営の共通認識はあった方が認識の齟齬による行き違いは減ります。
そのためには、行政における経営の定義や経営に冠する手法の標準化をある程度進めていく必要があります。
なぜならば、それらなくしては、経営が個々の人的能力に依存することになり、組織としての持続可能性に課題が残るためです。
また、経営に対する機運が醸成されていないと、経営に関する定義を考えたり、その手法を気にかけたりすることも組織としてなされない可能性もあります。
そこでまずは、行政の中で職員数が最も多く身近な地方自治体の経営に焦点をあてることで、行政経営に冠する認識共有と特に機運醸成を図っていきたいと考えています。
事例共有を通じた自治体職員・組織のエンパワメント
次に、事例研究を通じた自治体職員・組織のエンパワメントについてです。
これは、自治体経営に関する事例研究を通じて、自治体職員の知見を拡充し、エンパワメントすることです。
職員が経営を行うためには、経営に必要な能力(マインドセット、リテラシー及びスキルセット)を持った上で、経営に関する実践とそれに基づく経験を積み重ねることが成長への重要な要素となります。
一方で、大半の自治体では年功序列で役職が上がることが一般的であり、経営に関わる管理職になるまでは、限られた管理職の背中を通じてでしか、経営を知ったり、学んだりすることはできません。
管理職になってから管理職研修を受けることも大切な学びとなりますが、やはり管理職になる前から「経営について知って、考える機会」がもう少し多種多様にあれば、管理
職になった際の役割の不適合も減りますし、組織としての力も向上します。
そこで、自治体職員の皆さんに身近な事例を共有することで、実践的に「経営について知って、考える機会」を提供できたらと考えています。
この結果、職員、組織の双方がより高い経営の実践をできるようにエンパワメントします。
行政経営の体系化
最後に、行政経営の体系化についてです。
これは、雑考形式でコラムを連載しながら、順次自治体経営の考察を通じて行政経営に関する内容を体系化することです。
私は講演等を通じて行政における経営の重要性を自治体職員へ伝えているものの、これらの知見は私自身が自治体、民間企業及び非営利団体の経営に様々な立場で関わった上での経験則によるものです。
一方で、その経験則に基づく経営の知見を体系化できているわけではなく、この点を打開できれば、さらに多くの人々に行政における経営の重要性を認識して頂き、手法を会得する機会を増やせるのではないかと日々思案してきました。
そこで、この行政における経営という小難しいテーマについて、コラムという場を借りることで、体系化に挑みます。そして、この過程を旅と比喩させて頂きました。
以上、少々難しく表現しましたが、自治体経営への旅にご一緒して頂けたら幸いです。
この記事の執筆者
菅原 直敏(すがわら なおとし)
福島県磐梯町「旅する」副町長
旅人、ソーシャルワーカー及び経営者。2024年4月より福島県磐梯町「旅する」副町長に就任。
共生社会の共創をミッションに、日本初の自治体CHRO(最高人事責任者)として、「働き方の再デザイン」を牽引する。
一般財団法人旅代表理事、CoCo Consulting 株式会社代表取締役として、非営利団体、営利企業の経営も行なっている。