※本記事は、『オムニ・マネジメント』2025年6月号掲載内容を再編集のうえ掲載しています。
人口減少や少子高齢化が進むなか、自治体にはこれまで以上に難しい判断が求められています。
「アレもコレも」から「アレかコレか」へ――。限られた資源のなかで、地域の未来をどう描き、何を選び取っていくのか。
本連載では、自治体職員や自治体との協業に関わる企業の方に向けて、これからの自治体経営を考える視点をお届けします。
執筆者は、福島県磐梯町の旅する副町長をはじめ、公共・ビジネス・非営利の各分野で地域づくりに関わり、全国100以上の自治体と協働・共創を重ねてきた菅原直敏氏です。
(文:D-OMNi編集部)
なぜ自治体に「経営」が必要なのか
今回は、最も本質的な問いである「経営(マネジメント)」について考察したいと思います。
この連載の目的の一つが、「行政経営の体系化:雑考形式でコラムを連載しながら、順次自治体経営の考察を通じて行政経営に関する内容を体系化すること」であるためです。
さて、みなさんは経営又はマネジメントという言葉を聞いてどのようなイメージを持たれるでしょうか?
おそらく、10人にお伺いすると、10通りのお答えが返ってくると思います。
また、より厳密な定義としてお伺いすると、明快に答えられる人は限られるのではないかと思います。
一方で、行政「経営」という言葉は役所の組織名等に用いる自治体は安定的に存在しますし、Google トレンドを用いて日本において「行政経営」「自治体経営」「地域経営」等の自治体に関する近接用語が検索されている頻度を確認すると、近年微増傾向にあります。
つまり、自治体において経営という言葉が用いられる機会が着実に増加しており、自治体関係者が経営の概念に対する共通認識を持つことで、自治体における経営の実践が促進されるのではないかというのが私の仮説です。
ドラッカーの定義で見るマネジメント
ところで、本連載は「行政経営」を自治体実務に合わせて定義していくことも視野に入っていますが、経営の定義を曖昧にしたまま進めると読者のみなさんの認識に齟齬が生まれる可能性が高くなります。
そこで、経営(マネジメント)の定義を、「マネジメントとは、組織に成果をあげさせるための道具、機能、機関である」と仮置きします。
この定義は、現代経営学に大きな功績を残したピーター・ファーディナンド・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)の定義です。
この定義を用いる理由は2つあります。
最初の理由は、ドラッカーはマネジメントの役割を、自らの組織に特有の使命を果たすこと、働く人たちを生かすこと及び社会問題の解決に貢献することと捉えており、自治体の社会的意義に親和性があると考えたためです。
次の理由は、ドラッカー自身が日本の企業等の経営に造詣が深く、日本の自治体における経営を考える際にも示唆を得られると考えたためです。
また、今後は「経営」ではなく「マネジメント」という言葉を意識的に用いていきます。
経営という言葉は首長や社長等の幹部職員が行うトップマネジメントを想像しやすく、様々な階層における経営を表現するためには、マネジメントという言葉を用いる方が、表現しやすいと考えたためです。
以上より、行政経営とは、組織(役所全体、各部署)に成果をあげさせるための道具、機能、機関であると読み替えることができます。
また、このように仮置きすると、行政におけるマネジメントの位置付けがはっきりしてくると思います。
自治体のミッション・ヴィジョンを実現するために、各組織が成果をあげるために、多種多様な利害関係者(ステークホルダー)及び社会関係資本(ソーシャルキャピタル)をマネジメントすることが、自治体には求められると私は考えています。
これらが、自治体をマネジメントする難しさであり、一方で醍醐味でもあるとも考えています。
これからの自治体経営を考える
自治体が抱える課題を解消し、未来への価値を創造するためには、従来の手法のみによることには限界があります。
また、マネジメントを自治体において適切に実践するためには、組織としても、自治体関係者各位もマネジメントに関する認識共有を図り、そのリテラシーとスキルセットを底上げしていくことが重要です。
以上、今回は経営及びマネジメントの考え方について認識共有を図りましたが、自治体経営への旅にご一緒して頂けたら幸いです。
画像:生成AI作成
この記事の執筆者
菅原 直敏(すがわら なおとし)
福島県磐梯町「旅する」副町長
旅人、ソーシャルワーカー及び経営者。2024年4月より福島県磐梯町「旅する」副町長に就任。
共生社会の共創をミッションに、日本初の自治体CHRO(最高人事責任者)として、「働き方の再デザイン」を牽引する。
一般財団法人旅代表理事、CoCo Consulting 株式会社代表取締役として、非営利団体、営利企業の経営も行なっている。