首長の給与・待遇は自治体ごとに異なる
今回からは、首長の「経済的動機」について考察します。
前回まで取り上げた使命的動機が、首長として「何を実現したいか」という内的な要素を指すのに対し、経済的動機は「どのような給与や待遇の下で職責を果たしたいか」という外的な側面に関わります。
首長の給与・待遇はしばしば注目を集めるテーマですが、その仕組みや水準は自治体によって大きく異なります。
首長の給与等は、地方自治法第204 条に基づき、条例で定めることが義務づけられています。
一般的には、月額給与、期末手当(民間でいうボーナス)、退職金の三つで構成されます。
これらは議会の議決を経て定められ、自治体の財政力、人口規模、行政課題の多様さ、そして首長に求められる責任の範囲などが反映されています。
令和6年度「横浜市の給与・定員管理等について」によれば、日本で最も人口が多い横浜市の市長の給与月額は159 万円とされています。
夏冬の期末手当を加えると年収はおおむね2,000 万円台後半に達し、任期ごとに3,438 万円の退職金が支給されます。
一方、日本で最も人口が少ない青ヶ島村の村長は、令和6 年度「青ヶ島村の給与・定員管理等について」によると、給与月額が60 万円、期末手当を含めた年収は約900 万円、退職金は任期ごとに960 万円です。
両者の金額差は非常に大きいものの、それぞれの地域における行政規模や責任の重さを反映した結果だといえます。
なお、首長の給与等について、横浜市と青ヶ島村という人口規模の両極の事例を取り上げましたが、個別に確認すると政策的に減額されている自治体もあり、一般的な傾向とは異なる自治体も存在します。
また、都道府県知事の給与等は、神奈川県と横浜市のような一部の例外を除いては、域内の市町村長よりも一般的に高く設定されていますが、今回は市町村長を中心に考察します。
首長の仕事と報酬のバランス
このように、首長の給与は単なる金額の高低で比較できるものではありません。
大都市の首長は、多様な利害調整や政策運営、広域的なガバナンスを担い、地方の小規模自治体の首長は、住民生活の最前線で行政を支える存在として日々判断を重ねています。
給与は、その地域が首長に何を期待し、どのような行政経営を託しているのかを映し出す鏡でもあるのです。
もっとも、首長本人にとって経済的動機がどの程度の意味を持つかは一様ではありません。
多くの首長は、経済的利益よりも「地域をより良くしたい」という使命感を原動力に行動しています。
しかし、責任の重さや時間的拘束を考えれば、給与が十分とは言い難い場面も少なくありません。
つまり、給与や待遇が業務の負担と釣り合っているかが重要な判断要素となるでしょう。
首長と住民で異なる給与への見方
一方で、住民の側には「公務は奉仕である」という価値観を持つ人もいます。
首長給与の大幅な引き上げは批判を招くことが少なくありません。
結果として、時にはこの住民意識を逆手に取り、政治的に給与や退職金の減額を公約に掲げて当選する首長もいます。
給与額という数字は客観的指標であり、住民は自身の置かれている環境からその額の是非について考えることがあります。
一方で、首長を志す人は、自分の置かれている環境から、その額について動機づけになるかどうかを感じます。
この当事者と住民の意識のずれに、首長の給与等を考える際の難しさがあります。
以上を踏まえて、皆さんは、首長の給与・待遇等についてどのようにお感じになられたでしょうか?
次回は、首長と経済的動機について、首長・住民双方の視点から、さらに掘り下げていきます。
引き続き「自治体経営への旅」にご一緒いただければ幸いです。
この記事の執筆者
菅原 直敏(すがわら なおとし)
福島県磐梯町「旅する」副町長
旅人、ソーシャルワーカー及び経営者。2024年4月より福島県磐梯町「旅する」副町長に就任。 共生社会の共創をミッションに、日本初の自治体CHRO(最高人事責任者)として、「働き方の再デザイン」を牽引する。 一般財団法人旅代表理事、CoCo Consulting 株式会社代表取締役として、非営利団体、営利企業の経営も行なっている。