成長を続ける組織や個人の背中を追うと、ある共通項が見えてきます。 それは、組織を率いる「覚悟」「責任感」「実行力」です。 本連載では、具体的なエピソードを手がかりに、意思決定の裏側にある葛藤と、行動を加速させるマインドセット(思考の型)を紐解いていきます。 変化が激しい時代だからこそ求められる、シンプルかつ強力な「成長の原動力」を解き明かします。
(文:D-OMNi編集部)
目次
前回は、中小企業が国内企業の99.7%を占める主役であり、大企業とは異なる独自の強みを持つ一方、経営資源に制約を抱えていることを解説しました。 では、このような特徴を持つ中小企業は、具体的にどのような戦略で市場を勝ち抜いているのでしょう。 本連載のきっかけとなったのは、大分県の中小企業による異業種交流会の懇親会で、経営者の皆さんから経営のリアルな声を伺ったことでした。 本稿では、そこで得た気づきも交えながら、中小企業の具体的な生存戦略と、大企業が取り入れようとしている「中小企業的経営」の潮流について考察していきます。 中小企業がとる戦略の一つとして、まず挙げられるのが「範囲の経済性」です。 大量生産によりコストダウンを図る大企業の「規模の経済性」に対し、既存の設備や人材といった経営資源を複数の事業で共有することでコストを抑えるのが「範囲の経済性」です。
例えば、町のクリーニング店が店舗や配送網を活かして、靴の修理や衣類の保管サービスを始めるような取り組みが挙げられます。 次に、大企業が参入しづらい隙間市場を狙う「ニッチ戦略」です。 例えば大分県にあるM社は、工場の重要設備である減速機の歯車再生事業に特化し、ニッチな市場で成功を収めています。 以前、M社の方を授業のゲストスピーカーとしてお招きした際、「大企業が見逃しているこうした『特定分野への特化』と、環境変化へ素早く対応する『柔軟性』こそが中小企業の武器となっている」と伺い、感銘を受けました。 さらに、単独では弱くとも他社と連携して経営資源を補完し合う「ネットワーク理論(協同組合や異業種交流)」も有効な戦略です。
>興味深いことに、こうした中小企業の「俊敏さ」や「当事者意識」の強さを、組織の肥大化や硬直化に悩む大企業が積極的に取り入れる動きは昔からありました。 特に有名なのは、京セラの「アメーバ経営」です。私も若い頃にこの仕組みを知り、組織の理想の在り方のひとつとしてきました。 アメーバ経営は組織を小集団に分け、独立採算で運営することにより、全員に経営者意識を持たせます。 ソニーの統合しない「自律分散型組織」や、リクルートの新事業提案制度「Ring」なども、大企業の中に「小さなスタートアップ(中小企業)」を擬似的に作り出す試みにほかなりません。 大企業がこうした「中小企業的経営」を取り入れる利点は明確です。 「意思決定のスピード向上」、「現場のモチベーション向上」、「ボトムアップによるイノベーションの創出」、さらには全社員が利益を意識する「コスト意識の醸成」や「顧客起点の発想」も期待できます。 これからの不確実な時代、企業の強さは単純な「規模の大きさ」だけでは測れません。 中小企業は自らの強みを武器に独自の生存領域を切り拓き、大企業は組織内に中小企業の魂を宿すことで硬直化を防ぐ。 双方が枠を超え「迅速かつ自律的な経営」を実践することこそが、次代のビジネスを生き抜く最適解となるではと考えています。
この記事の執筆者
橋本堅次郎(はしもと・けんじろう)
日本文理大学学長
専門分野は経営学、組織変革、流通経営。「組織と人の成長に貢献する」が長年のミッション。小売業・コンサルタントファームを経て役員・管理職として食品業(東証1部)等の上場に携わる。 人材育成事業を起業後、2011年より日本文理大学経営経済学部教授として学生と社会人の指導、地域活性活動を行い、ミッションの実現に尽力している。2021年4月より日本文理大学学長に就任。
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