※本記事は、『オムニ・マネジメント』2025年5月号掲載内容を再編集のうえ掲載しています。
若手社員の早期離職は、多くの企業・自治体に共通する課題となっています。
「せっかく採用した若手がすぐ辞めてしまう」「どう接すればよいのか分からない」――こうした悩みを感じている方も多いのではないでしょうか。
「3年以内3割」と言われる現象は、なぜ繰り返されるのでしょうか。
本シリーズでは、世代特性や時代背景を踏まえ、その構造を整理するとともに、この世代の事例を通じて、若手の行動や意思決定の実像に迫ります。理論と実例の両面から、現場で活かせるヒントを探っていきます。
(文:D-OMNi編集部)
コロナ禍を経験したZ世代の特徴
今回は、私が日々接している現在の大学生(2004~2007年生まれ)を中心に、コロナ禍を経たZ世代の特徴について考えてみましょう。
現在の大学生に共通する背景は以下の通りです。
1.高校生という多感な成長期に新型コロナのパンデミックを経験した
2.人間関係構築の機会を得られなかった世代で、“コミュニケーション能力への不安”を抱えている
3.失われた成長機会を取り戻そうという“自己成長への強い欲求”がさらに高まっている
こうした特徴を踏まえ、私は学生たちを4つの層に分類しています。
ひとくくりにできないZ世代――学生たちの「4つの層」
画像:筆者作成
1.積極行動層
コロナ禍の制限から解放され、「やった! 自由に動ける!」という喜びを感じ自走する学生たちです。しなやかに柔軟に、積極的に考えた事を実現しようとします。
海外留学への挑戦、学生団体の立ち上げなど内外を問わず、多様な交流を大事にします。自らの能力を試すためにコンテストにも積極的に参加します。
本学の事例を紹介します。
「地域活性活動」として“ろーかるでざいん研究会” を学生が設立。
大分県佐賀関地区で高齢者向けスマホ教室を開始。
自治体や病院など地域の大人たちと連携し、2024 年には高齢者と若者が交流できる「ふれあいカフェ」を開設。
現在は他大学や高校ともネットワークを築き学生主導で運営しています。
参加する学生たちは「自分たちのコミュニケーション能力が高まるのを実感できて楽しい」と語ります。
また2024 年11 月には、WHO 関係者(ラオス・フィリピン・バヌアツ)11 名が「ふれあいカフェ」の視察に訪れ国際的な注目を集めました。
積極行動層の彼らは仲間を集め、大人たちを巻き込みながら自走します。大学はあくまで伴走する立場です。地域と関わるきっかけづくりは相談にのりますが、主体は学生です。
様々な出会いや失敗、成功を体験する中で学生は成長して行きます。
2.方向性模索層
「何かしたい」という意欲はあるものの、何から始めればよいか分からず足踏みしている層です。
不安や焦りを感じながらも、一歩が踏み出せません。自分がそんな現状から抜け出せないでいることに焦りや不安を感じています。
積極行動層がこの方向性模索層を巻き込むと、方向性模索層は彼らとの関わりの中で自信をつけ、成長していく可能性を持っています。
3.日常受動層
いわゆる中間層やボリュームゾーンと言われる層です。
授業への出席や遊びや友達付き合い、アルバイトなど日常に流されがちです。しかし出会いや経験などなんらかのきっかけで成長する可能性を秘めています。
私たちはこの層に対し「成長のサイクル=出会い×実践×経験×成長・進化」というカリキュラムで教育を行っています。これは地域をキャンパスに見立て「人、コト、モノ、自然」との出会いを通じて、地域課題に取り組み成長を促すカリキュラムで、10 年以上展開しています。
4.要支援層
経験値が不足して自ら動けない層です。
現実から距離を置き、ゲームや動画などで日々の生活に埋没します。登校しないケースが多いため大学・医療機関・支援チーム、家族、友人などが連携した包括的な支援が必要です。多様な背景を持つため専門家の関与も不可欠です。
昨今は小中学校でも同様の傾向が見られ、今後はこの層の増加が予想されます。
次回はこのZ 世代と他世代とのギャップ、そして効果的な指導方法について考えてみましょう。
この記事の執筆者
橋本堅次郎(はしもと・けんじろう)
日本文理大学学長
専門分野は経営学、組織変革、流通経営。「組織と人の成長に貢献する」が長年のミッション。小売業・コンサルタントファームを経て役員・管理職として食品業(東証1部)等の上場に携わる。
人材育成事業を起業後、2011年より日本文理大学経営経済学部教授として学生と社会人の指導、地域活性活動を行い、ミッションの実現に尽力している。2021年4月より日本文理大学学長に就任。