メジャーリーグの世界は、常識を根底から覆す環境である。
そこでは、過去の栄光は一切通用しない。どれほどアマチュア時代に輝かしい成績を残し、周囲から天才と
呼ばれていたとしても、プロの世界に入った瞬間に与えられる評価はただ一つ、「ゼロ」である。
この厳しい現実は、ビジネスの世界にもそのまま当てはまる。
新しい会社、新しい部署、新しい役割に入ったとき、これまでの実績は参考にはなるが、保証にはならない。
むしろ問われるのは、「いま、この環境で何ができるか」という一点である。
メジャーリーガーになる選手たちは例外なく、マイナーリーグという下積みを経験する。
それは単なる技術向上の場ではない。むしろ本質は、心・技・体、そして人間性を根本から鍛え直す期間にある。
このプロセスは、企業における新人研修やOJTと似ているが、より厳格で逃げ場がない。
なぜなら、競争相手は全員が同じように優秀で、なおかつ常に結果で評価されるからだ。
マイナーリーグでは、こんな印象的な言葉が繰り返される。
「花を咲かせたければ、まず根を張れ」
この言葉は非常に示唆的である。
現代社会では、短期間で結果を出すことが求められがちだ。しかし、どれほど美しい花も、しっかりとした
根がなければすぐに枯れてしまう。実際、マイナーリーグ経験を経ずにメジャーリーグに上がった選手の多くは、
長期的に成功していない。
理由は単純で、「根」が不十分だからである。
技術だけでなく、逆境への耐性、自己管理能力、精神的な強さが備わっていないのだ。
さらに特徴的なのが「教え方」である。
マイナーリーグやメジャーリーグのコーチは、日本のように手取り足取り教えない。問題を抱えた選手に
対しても具体的な答えは与えず、こう言うだけだ。
「よく見て、考えろ」
一見、突き放しているように見えるが、これは非常に本質的な教育である。人から与えられた答えは忘れる。
しかし、自分で考え、試し、失敗し、掴んだ答えは一生残る。
また、メジャーリーグでは「自分流の確立」が強く求められる。
成功者のフォームを真似することは、確かに近道に見える。しかし、その先にあるのは「その人の劣化版」
でしかない。だからこそ、徹底的に考え、自分に最適な方法を見つける。体格も、性格も、才能も異なる
人間に「万能の正解」は存在しない。
最終的には、自分で考え、自分で決め、自分で責任を取る。
この姿勢こそが、超競争社会で生き残るための最も重要な基礎となるのである。
著者紹介
タック川本 氏
国際ビジネス&スポーツアナリスト
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早稲田大学卒業後、南米アマゾン河で探検、研究生活をおくる。その後、アメリカにて国際情報社会学、
インターナショナルスポーツファイナンシャルマネージメントを研究し、中西部を中心にビジネスコンサルタントとして活躍。
メジャーリーグ カンザスシティ・ロイヤルズ、カナダのモントリオールエクスポズ(現:ワシントン・ナショナルズ)を経て、
ロサンゼルス・エンゼルスの国際編成に移籍。2002年のワールドチャンピオン初制覇も経験。
80歳を越えた現在も、日米で講演家、著述家としてテレビ、ラジオ、講演会などで幅広くご活躍中。
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