ワーク・ライフ・バランスがとれるロールモデルが女性活躍を推進
-ミレニアル世代の若手女性社(職)員に対する支援・育成が課題-
「第2回 女性管理職意識調査」結果を分析して
一般社団法人日本経営協会(会長:浦野光人、東京都・渋谷区)は、このたび「第2回 女性管理職意識調査」を実施し、『
女性管理職意識調査報告書 2017』としてとりまとめました。
●背景と調査内容
平成28年4月1日に通称「女性活躍推進法」が施行され、「働き方改革」が重要課題となった今、女性の働く環境がより一層改善されることにより、さらなる女性の活躍が期待されています。
今回、本会が定点調査として実施した「第2回 女性管理職意識調査」は、女性管理職に対する意識調査(個人調査)と企業(団体)の人事担当者に対する調査(組織調査)を並行して行いました。
個人調査では<女性管理職の現状について><女性管理職の働き方について><女性活躍推進について><能力について>の4群20項目の設問により、女性管理職と女性管理職候補のワークライフの現状や働き方への意識等を調査しました。他方、組織調査では<組織における女性管理職の現状について><女性が働く環境について><女性活躍推進について><能力開発について>の4群15項目の設問を通じて女性管理職に対する組織としての考え方を明らかにしました。そこから、女性管理職(女性管理職候補を含む)の意識と組織の考え方とのギャップ等を明らかにするとともに、企業(団体)が今後取り組むべき課題等を探っています。
以上のような調査結果を基に、女性の企業(団体)での就労と組織・職場でのさらなる活躍を促進し、活力ある社会、そして経済・社会の持続可能性を高めるために、以下を提言いたします。
1 女性が活躍できる舞台(土台)を用意する
グローバル対応、ダイバーシティ対応が企業(団体)の命題となって久しい今日、「女性活躍推進法」の施行を待たずに女性が活躍できる組織づくりに取り組んできた先進企業(団体)は少なくないであろう。しかしながら、男性優位の企業(団体)風土は未だ払拭できておらず、家庭(家事・育児・介護等)との両立が困難なまま働くことを強いられている女性が多く存在することもまた事実である。企業(団体)はこれら根本的な問題を直視し、女性が能力を発揮したいと思えるような組織を再構築すると同時に、女性社(職)員を最大限に活かせる舞台(土台)を用意したり、活躍できる多様なビジネスシーンを創出したりする必要がある。
このために以下の方策をとることが必要である。
2 次世代リーダーの育成に注力する
次世代リーダーを育成するために、採用時から男女差のない人事異動・能力開発を行うことは当然のことである。管理職に必要な能力・資質の中でも特に女性が男性に比べて自信を持てない能力である「指導力」「管理統率力」「行動力」については、これを養うための方策を講じることが必要である。ロールモデルについては、これを組織内に提示することは有効であるが、長時間労働で仕事一辺倒の女性管理職ではなく、ワーク・ライフ・バランスを保ち成果を上げている女性管理職をロールモデルとすることを考えたい。また、管理職候補に位置付けられた女性に対しては、優秀で面倒見のよい上司の下に配属することも有効である。この場合、上司をメンター(制度ではなく精神的に支える人)として活用できればさらに良いが、そのための意識づけとメンターとしての働きを評価する仕掛けが必要である。
3 ワーク・ライフ・バランスが容易に保てる制度と職場環境づくりに注力する
女性管理職は家庭と仕事の両立、そして自分の時間を確保するために、タイムマネジメントや仕事の効率化など様々な工夫を行って時間を捻出している。すでに男性社会の画一的な管理職像を追求する時ではない。企業(団体)が時短勤務、フレックスタイム、テレワーク等なるべく多くの方法を準備し、働く時間のフレキシビリティ(柔軟性)を提供することによって、女性はさらに自由裁量的に時間を使えるようになり、一層ワーク・ライフ・バランスが取りやすくなる。また、これと並行して休暇を取得しやすい職場の雰囲気の醸成や情報共有の仕組みや、相互扶助可能な余裕ある人員体制を整えることも、重要である。これからは、フルタイムワークを前提とした管理職ばかりでなく、労働日数の少ない管理職(週4日勤務など)や複数名で管理職の役割をシェアする短時間勤務の管理職等の柔軟性の高い働き方を模索する時代と言える。
4 30代以下の女性社(職)員への支援・育成体制を強化する
30代以下の若い世代の女性は、管理職になることに抵抗がなく、なることのメリットも大いに感じている上にモチベーションも高い。しかしながら家庭では子育て・育児の問題、悩み、そして仕事では多数の問題・悩みを抱えている。この年代をいかにバックアップし、育成とリテンションを図るかが女性活躍を進める要(かなめ)となる。そのためにも、一般職を含めた若い世代の女性社(職)員に対して、難易度の高い案件や新分野にチャレンジすることを積極的に促し、またコーチ・フォローしながら育成することのできる上司の育成が重要である。