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若手社会人就労意識ギャップ調査報告書2016

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『若手社会人就労意識ギャップ調査報告書2016』とは

 一般社団法人日本経営協会では、平成24年6月に「第1回若手社会人就労意識ギャップ調査」を実施し、その集計結果をもとに『若手社会人就労意識ギャップ調査報告書2012』をまとめ、各方面から様々な反響をいただきました。4年後の今年5月下旬に同様の調査を行い、この度「若手社会人就労意識ギャップ調査報告書2016」としてまとめました。
●調査の背景
 少子高齢時代に突入している我が国は、深刻な労働力不足に直面しようとしており、良質な労働力の確保は企業(団体)における重要な課題の一つとなっています。苦労して採用した新卒社(職)員の3人に1人が3年以内に離職する現実が社会問題ともなる今日(厚生労働省「新規学卒者の離職状況に関する資料一覧」より)、企業(団体)の多くが人材の確保・定着に苦慮しています。

 このような経営環境にある中で、前回調査では、若手社(職)員の学生時代のイメージと就職後の実態とのギャップの方向と大きさが、転職志向や昇進(昇任)意欲に影響を与えていることが明らかとなりました。今回の調査では、対象を「ゆとり世代」と呼ばれる20代の若手社(職)員に限定して、就職や仕事に対する意識、社会人になって感じたギャップ、キャリアデザイン、ワーク・ライフ・バランス等、就労や人生設計にあたって彼ら(彼女ら)がどのように感じ、考えているのかについて19項目の設問を用意して明らかにしました。
本調査報告書では、今回の調査分析から読みとれること、垣間見えたこと、明らかになったことを中心に記述していますが、調査結果を踏まえた提言も行っております。
●調査方法・対象者数
本調査はインターネットを活用するWEB調査法により実施しました。
調査の対象は、大学・大学院・専門学校等を卒業し初めて就職して2年半~3年半経過した現在正規雇用者として働いている方としました。また、調査は5月中に実施し、有効回答総数は668件でした。

「若手社会人就労意識ギャップ調査報告書2016」内容

  • はじめに
  • 結果概要
  • 調査方法・回収状況
  • 回答者のプロフィール
  • ≪就職活動と入社(職)後のギャップ≫
    (1) 最初に入社(職)した会社(団体)を選んだ理由
    (2) 最初に入社(職)した会社(団体)の情報収集・研究で参考になったもの
    (3) 学生時代に抱いていたイメージと実際に就職して感じたギャップ
    (4) 現在勤務している会社(団体)に就職(再就職)してよかったと感じたこと・瞬間
  • ≪キャリアデザインについて≫
    (5) キャリアデザインの有無について
    (6) 仕事や能力開発、キャリア開発について相談できる人の存在
    (7) 今の会社(団体)でいつまで働き続けたいか
    (8) 昇進(昇任)志向について
  • ≪転職志向について≫
    (9) 再度就職活動を行えるとしたら就職活動をするか
    (10) 転職について
  • ≪理想の職場と就労意識について≫
    (11) 仕事を行ううえで大切だと思うこと
    (12) モチベーションが下がる理由
    (13) 職場の上司に望むこと
    (14) どのような職場で働きたいか
    (15) 賃金と処遇について
    (16) ワーク・ライフ・バランスのために行っていること
  • ≪特性と能力について≫
    (17) 「ゆとり世代」の特性
    (18) 自信のある能力
    (19) 不足している能力
  • 資料編
    第2回若手社会人就労意識ギャップ調査票
    第2回若手社会人就労意識ギャップ調査結果概要
  • 第2回若手社会人就労意識ギャップ調査結果概要
  •   ≪就職活動と入社(職)後のギャップ≫
    最初に入社(職)した会社(団体)を選んだ理由として20%を超えた選択肢は、上位から順に「自分のやりたい仕事ができると思ったから」「安定感があると持ったから」「実力(スキル・キャリア・人脈)がつくと思ったから」「給与・福利厚生が良いと思ったから」であった。若手社会人(ゆとり世代)は精神的・物質的な安心感の中に身を置きつつ、やりたい仕事をしながら実力を蓄えようとしている傾向が見られる。
    学校を卒業して最初に就職した会社は、就業環境は想像していたより快適である(良い方向のギャップ)が、給与やキャリア形成といった会社(団体)から得られるものは期待していたほどではなかった(悪い方向のギャップ)という評価である。
      ≪キャリアデザインについて≫
    半数以上がキャリアデザインを持っていない。前回調査と比べると、男性の「持っている」は7.3ポイントアップしたが、女性は変化が見られない。また、女性は昇進(昇任)意欲も男性に比べて低い(管理職以上に昇進(昇任)したいと回答した女性は16.5%にとどまる)。女性活躍推進が国の重要課題となっているものの、キャリアに対する女性の意識はあまり変化していないと考えられる。
    キャリアデザインを持っている人は持っていない人に比べて就職に際して情報収集・研究を熱心に行っているが、このこともあって就職してからの悪い方向のギャップが生じにくい。
    4割強が「昇進(昇任)したくない」と回答した。前回調査に比べて8.5ポイント増加しており、全体的に昇進(昇任)志向の低下が認められる。なお、キャリアデザインの有無と、就職して感じたギャップは、昇進(昇任)志向に影響を与えているものと考えられる。
      ≪転職志向について≫
    半数近くが再度就職活動を行えるとしたら就職活動する「する」と回答した。若者の転職志向は一層高まる傾向にある。
    3人に2人は転職経験者か機会があれば転職したいと考えており、その際に重視するポイントは給与や福利厚生である。
    転職の際に重視するポイントでは「給与・福利厚生が良い」が1位(44.2%)で、入社(職)時の水準の2倍以上となった。就職後に感じたギャップの1位が「給与面」であったことにも表れているように、給与における不満が転職に直結するケースが多いことが窺われる。
      ≪理想の職場と就労意識について≫
    モチベーションが下がる理由の1位は「職場の人間関係が良くないとき」(39.1%)であり、どのような職場で働きたいかの1位は「人間関係や雰囲気がよい」(63.0%)であった。職場における人間関係の良し悪しがモチベーションに大きな影響を与えている。
    職場の上司に要望することとしては、仕事の指示命令・OJTや仕事の配分に関することが上位を占めている。若手社(職)員は、親切丁寧にOJTをしてもらえ、自分の意見も言いやすい居心地の良い職場で、ミスや無駄を避けて効率的に働きたいと思っている。
    処遇についての考え方は、どちらかと言えば、「年功序列」より「実力主義」を好ましいと感じている。また、約3割の回答者が入社(職)後に変化したと回答しており、変化の方向としては「年功序列」から「実力主義」に変化した人の方が多かった。この変化にも入社後に感じたギャップが影響を与えている。
      ≪特性と能力について≫
     自分たち「ゆとり世代」については、人と争うことを好まず、自分に対して素直で、個性豊かな人が多く、わかりやすく説明されたり、指示されたりすることを好む人が多いと自認している。
     勤務先が求めている能力と自分に不足していると思う能力では、「主体性」と「実行力」については組織側の要求する能力と合致している。一方「状況把握力」と「ストレスコントロール力」については若手社(職)員と組織の間にギャップがある(若手社(職)員はそれほど不足を感じていないが、組織側からの要求順位は高い)。
  • 提言
  •  1. 学校のキャリア教育と企業(団体)のキャリア開発支援の充実 
    キャリアデザインを持って就職活動する人は、就職後に悪い方向のギャップが生まれにくいため、
    (キャリアデザインを持っていない人に比べて)転職志向が低く、昇進(昇任)意欲が高い傾向がある。
    この点から見て、
      1)義務教育・高等教育の各段階で職業やキャリアを意識したプログラムが導入されることが望ましい。
      2)企業(団体)においては、採用時にキャリア意識・志向の確認を行うことや、
       入社(職)後に個別キャリア育成計画を作成して定期的に見直すことが望ましい。
    2. 入社(職)前のイメージと実際の職場においてギャップが生じる原因は、学生の情報収集・研究不足だけでなく、
    企業(団体)側の情報提供の方法や質にもあると思われる。苦労して採用した優秀な社(職)員も、
    早々に離職されてしまっては費用対効果の面ではマイナスである。
    もちろん、苦労して入社(職)した若手自身にとってもコストパフォーマンスは悪い。
    現実の会社(団体)生活とかけ離れたイメージを与えない(持たれない)ことが大切である。
    特に給与に関する誤解は転職に直結しやすいため、採用段階での情報提供・確認は必須である。
    3.

    「ゆとり世代」の特性を生かした人材育成・確保
    <競争を好まない><素直><個性豊か>などの特性を持つ「ゆとり世代」の社(職)員は、
    職場の人間関係に敏感である。周囲の人間から親切・丁寧なOJTを受けながら、
    その中で自分の個性も主張できるような環境を望んでいる。
    人材としてこの世代の社(職)員を生かすため、そして安易に離職を選択させないためにも、
    彼らの期待を裏切らないような育成方法を採るべきであろう。
    これまでと異なった環境(年齢や経験の違う人間と共に仕事をすること)に身を置く中で、
    若く柔軟で素直な彼ら(彼女ら)は少しずつ変化するはずである。
    なお、「ゆとり世代」に限らないが、若手社(職)員が過信や自信不足、不安に陥らないよう、
    自身についての客観的な能力診断を可能にする機会等、組織としてのバックアップに注力したい。
    4. 女性の活躍推進にむけての体制づくり
    女性の活躍推進については国家的プロジェクトとなっているが、今回の調査から見るところ、
    女性の若手社(職)員のキャリア意識、昇進(昇任)意欲、就労意識は男性との間に明らかな格差が存在している。
    本会が2015年度に行った「女性躍進に関する調査」において、20代女性は入社(職)後に昇進(昇任)意欲が増す
    傾向があるという結果が得られている。企業(団体)はこのことを踏まえて、人事・人材育成制度や組織・職場風土の醸成など、
    組織として女性の活躍を全面的にバックアップすることが望まれる。